Research Abstract |
四川大地震時形成された大規模天然ダムの形成・決壊機構を解明するため,幾つかの大規模天然ダムを対象に,その地質背景を調査すると共に,高精度表面波探査と微動アレイ調査を実施し,ダム堤体の物性を調べた.また,ダム堤体において地震観測を行い,その地震動特性も調べた.その結果は,下記の通りである. (1)災害直後の衛星写真より,250余りの天然ダムが形成されたことが分かちた.その内ダム高さが10m以上,堰止め湖総貯水量が10000m^3以上,かつ集水面積が20km^2以上の堰止め湖が104箇所形成された.その多くは川の右岸側の斜面に於いて発生した地すべりにより形成されたもので,地震断層に沿って分布している.その原因としては,地震断層の破壊進行方向(NEN)と河川の流下方向(多くはESE方向)が直交していることが考えられる. (2)形成された天然ダムの堤体は地すべり源頭部の地質によって異なる.白雲岩や石灰岩地層からの地すべり土砂に大きな岩塊があり,堤体は比較的に安定であるが,玄武岩と千枚岩および砂岩泥岩互層に起源した地すべり土砂には細粒物が多く,堤体の安定性が低い.また,長距離移動した土砂において,岩塊の破砕や偏析が発生し,形成された堤体の安定性が低くなると考えられる. (3)ダム堤体に対して表面波探査および微動アレイ調査を行った結果,ダム堤体の非均一性及び特異性が地質・地形背景或いは地すべりタイプによって異なることが分かった.長距離運動した地すべり土塊により形成されたダム堤体が,そのS-波速度が低く,安定性が低い.河床のすぐ横の斜面において発生した地すべりにより形成した天然ダムの堤体がそのS-波速度が大きく,全体の安定性が高いと推測できる. (4)唐家山天然ダムに対して,地震動観測を行った.その結果,ダム堤体の固有周波数は約5Hzであることが分かった.すなわち,ダム堤体を構成する土層が全体として固いことが分かった.また,ダム堤体の上下流方向に沿った地震動が卓越していることも分かった.
|