Research Abstract |
四川大地震時に形成された大規模天然ダムの形成・決壊機構を解明するため,H21年度に続きH22年度には,幾つかの大規模天然ダムを対象に,その地質背景および運動特性を調査すると共に,高精度表面波探査と微動アレイー調査を実施し,ダム堤体の物性を調べた.また,H16年中越地震により形成された東竹沢天然ダムの堤体物性(S波速度分布)を調べ,その結果と四川の天然ダムの堤体特性と比べて,四川の大規模天然ダムの安定性を評価した。その結果は下記の通りである (1) 異なる時期の衛星写真を判読した結果,四川大地震時に800余りの天然ダムが形成され,その内,45%が一週間,60%が一ケ月,90%が一年以内で決壊したことを判明した。 (2) 白雲岩や石灰岩地層に起源し,長距離移動した地すべり土塊により形成された天然ダム(例えば,天池および老鷹岩)の堤体において,岩塊の破砕や偏析が激しく発生し,形成された堤体の表層が大きな岩塊(~m)で覆われているが,堤体の内部および底部に行くほど,粒径が小さくなったことが分かった。これらの粒径分布特性を考慮したダム堤体の安定性評価手法の開発が必要である。 (3) H16年中越地震時に形成された東竹沢天然ダムの堤体に対して,高精度表面波探査および微動アレイー調査を実施した結果,天然ダムを形成する地すべり移動土塊が殆どその形が崩れていないままで斜面と平行して移動していたことが分かった.また,ダム堤体のS波速度が,四川大地震の時に白雲岩や石灰岩地層に起源した天然ダムに対して,全体として低いことがわかった。東竹沢天然ダムが堰止め湖の水位の上昇やパイビングにより決壊する可能性が低いことが,地震直後の調査およびその後の種々の数値解析などにより判明されているため,仮にダムのDimensionless Blockage Indexが同じである場合には,S波の高いダム堤体がより安全であろうと判断できる。
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