Research Abstract |
四川大地震時に形成された大規模天然ダムの形成・決壊機構を解明するため,H22年度に引き続きH23年度には,幾つかの大規模天然ダムを対象に,その地質背景と堆積機構を調査すると共に,高精度表面波探査およびダム堤体の粒径分析を実施し,ダム堤体の物性を調べた.また,H23年9月の台風12号により紀伊半島で発生した天然ダムの堤体物性(S波速度分布)を調べ,その結果と四川の天然ダムの堤体特性と比べて,異なる誘因及び地質背景で形成された天然ダムの安定性を評価した。その結果は,下記の通りである. (1)地すべりの移動距離が短く,元斜面の地層構造を保ったまま堆積して形成された天然ダムの堤体(例えば唐家山の天然ダム)が越流侵食に強くて,現在ほぼ定常状態に達していることが分かった。 (2)白雲岩や石灰岩地層からの岩盤崩落により形成された天然ダムの堤体において,岩塊の破砕や偏析により堤体の表層は大きな岩塊からなるが,ダム堤体の深部(下層)に行くほど,粒径が小さくなる。また,堤体の表層部および元河床付近の土層のS波速度が低く,ダム堤体の中心部のS波速度が高いことがわかった。 (4)平成23年台風12号によって発生した伏菟野,熊野及び赤谷の斜面崩壊及び天然ダムに対して現地調査と表面波探査を実施し,その内部構造と越流侵食安定性を調べた。天然ダムは形成しなかったものの流動化した伏菟野の崩壊の堆積土層のS波速度が低く(^200m/s),元地層との境界が明瞭に認められた。熊野の天然ダム堤体の表層に約5mの厚さで疎な土層(Vs≦250m/s)があることと,赤谷のダム堤体の表層が約4~6mの厚さで疎な土層(Vs<200m/s)からなっていることが,分かった。赤谷のダム堤体が越流の発生に伴い,急激に約4m低くなったことより,これらの粗な土層は越流侵食に弱いと考えられる。
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