2010 Fiscal Year Annual Research Report
マレーシア・サラワク州の熱帯雨林における流出・水質形成プロセスの研究
Project/Area Number |
21405021
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 雅一 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (10144346)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白木 克繁 東京農工大学, 共生科学技術研究院, 講師 (30313290)
蔵治 光一郎 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 准教授 (90282566)
大手 信人 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 准教授 (10233199)
|
Keywords | 熱帯雨林 / 溪流水質 / 流出プロセス / 物質収支 / 硫酸酸性土壌 |
Research Abstract |
ボルネオ島のマレーシア・サラワク州ランビル国立公園内の熱帯雨林において、土壌水分、地下水位、渓流流出量の観測とともに、雨水、林内雨、土壌水、地下水、渓流水の水質を計測した。流出量測定は自然河道を用い、断面積と流速を実測して、水位-流量曲線を作成し、連続観測する水位記録から、水位-流量曲線を用いて、流量を求めた。現地滞在中に、自動採水装置を稼動させて、短い時間間隔で渓流水を採取した。対象とする流域の斜面や0次谷の末端にある湧水点における採水、支流の合流点における採水によって、渓流水質の空間分布を調べた。また、流域の水分状態による、空間分布の変動を把握した。 ランビル国立公園内の2流域は、SO42-が高濃度で流出しており、硫酸酸性の渓流水である。その主要因は、過剰なSO4^<2->を緩衝する塩基性カチオンがないことによる。また、既往の雨量、流出量と水質の観測資料より、ランビル国立公園では、年間のSO4^<2->の流出量(64.6kh/ha/year)は降雨による流入量(6.5kg/ha/year)の約10倍もあることを明らかにした。また長期観測の中で記録された、30日間に数mmの降水量しかない熱帯雨林としては強度の乾燥状態の時期について、流出量、土壌永分の変動特性が解析された。 SO42-の起源はFeS2酸化の可能性が高いことが想定され、仮にランビル国立公園の低地フタバガキ林を農地開発しようとした場合には、酸性硫酸塩土壌の問題を引き起こす可能性があることを指摘した。国内において渓流水中のSO4^<2->濃度高い東京大学千葉演習林の山地流域における水質形成機構の比較観測を継続し、その水質が流域スケール、流量によって変化する実態を明らかにした。物質収支推定の精度向上と年々変動を明らかにする研究は、さらに継続した観測記録の取得が必要であるが、これまでに明らかにした上記成果について国内外において学会発表を行い、その幾つかについては学会誌投稿準備中である。
|
Research Products
(2 results)