2011 Fiscal Year Annual Research Report
インドシナ地域における環境修復型生産マネジメントシステムの構築
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21405032
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小林 愼太郎 京都大学, 地球環境学堂, 教授 (20026602)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水野 啓 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (10260613)
西前 出 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (80346098)
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Keywords | インドシナ / 地域開発 / 在来農業 / 地域資源 / 環境管理 |
Research Abstract |
ラオス南部(チャンパサック州)、カンボジア北東部(ラタナキリ州)、およびベトナム中部(クァンナム省)を対象に、環境修復型生産マネジメントシステム構築の基盤をなす地域の生業構造、土地利用、農業技術、自然災害等についての詳細調査を実施した。 チャンパサック州では、Pathoumpone郡Thopsok村における小規模チーク林分布の時系列変化を地図化し、その拡大が進む一方で気象条件や虫害による問題が深刻化していることが示された。また聞き取り調査から、チーク林業の生計への貢献は極めて低く、家畜やNTFPなどに大きく依存していることも明らかとなった。これらは、国の森林保護政策に合致する形で地域の生業と自然資源管理を維持する方策の実現に向けた大きな課題であることが示唆された。 ラタナキリ州においては、平野部のVuensai郡Pong村における水田耕作と生活に対する洪水の影響を詳細に調査し、微地形や水利条件によって洪水被害の程度に大きな差があること、住民への情報伝達手段が十分でなく世帯による災害対応能力に影響していることが明らかとなった。さらに、2007年以降同村に割り当てられた共有林(コミュニティ・フォレスト)の利用および管理実態を調査し、住民の森林資源に対する知識は高いものの、境界の画定やアクセスの整備、利用規定の周知等の管理上の課題が多いことが示された。丘陵帯であるOyadav郡Phi村においては、数世帯を対象に焼畑の耕作・移動歴を調査し、陸稲および各種作物の生産と森林資源利用の実態を把握するとともに、村全域における土地・森林資源の評価に向けた地図化を進めた。各世帯では、土地の資質や前年の収穫状況、商品作物(キャッサバ、カシュー等)の価格変動等を考慮して、流動的に耕作地や作物の選択を行っていることが明らかとなった。 クァンナム省のダム開発による移転村落では、劣悪な土地条件のもとでの耕作を余儀なくされた結果、遠方の森林への耕作拡大や、より好条件の場所への自主的な再移転の計画が進んでいることがわかった。 地域ごとに多様な自然・社会条件や開発の影響の中で、持続可能な生産・資源管理システムを構築していく上で、これらの知見は極めて重要な課題となるものであり、引き続きその深化を図る必要性が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的(1)に掲げた各対象地域における調査はほぼ計画どおりに進んでおり、(2)および(3)で目指す広域的な開発モデルの構築と将来に向けた代替モデルの提言を来年度の視野としている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き各対象地域での詳細調査を進めるとともに、得られた知見の範囲内で提言可能な「環境修復型生産マネジメントシステム構築」に向けたとりまとめを行う。
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