2009 Fiscal Year Annual Research Report
野生水禽や遺伝的抵抗鶏は何故マレック病を発症しないか:抵抗性因子と分子機序の解明
Project/Area Number |
21405034
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大橋 和彦 Hokkaido University, 大学院・獣医学研究科, 教授 (90250498)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今内 覚 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 准教授 (40396304)
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Keywords | マレック病 / マレック病ウイルス / インターフエロンγ |
Research Abstract |
マレック病(MD)は、マレック病ウイルス(MDV)の感染を原因としてT細胞に悪性リンパ腫をもたらす鶏の疾病である。現在、MDはMDV弱毒株および非病原性のMDVを用いた生ワクチンによってほぼ制御されているが、近年野外で分離されるMDVは強毒化の傾向にあり世界各地でワクチンブレークが散発し問題となっている。またMDVの自然宿主は従来鶏やウズラであるとされてきたが、野生水禽に高率で強毒株MDVが感染していることが分かり、MDVによるリンパ腫発症機序の解明と新たなワクチン戦略の開発が望まれている。これまでの感染実験や疫学調査の結果から、マガンなどはMDに対する抵抗性を保持している可能性があり、本研究ではMDVに対する防除法の開発のために、マガンなどに存在するMD抵抗性を示す免疫機構を探ることを目的として行った。 その比較に用いる因子としで数多くの病態形成因子の中から、MD発症機構に重要な宿主因子とされているinterferon(IFN)γについて、その発現分子機序をマガンと鶏間で比較した。そこで、マガンや各種の野外鶏についてIFNγのプロモーター領域をクローニングしてルシフェラーゼアッセイを行い、それぞれの転写活性を測定した。その結果、鶏よりもマガンで、MDVの病原性に重要な転写因子であるMeqにより、IFNγプロモーターの転写活性が強く抑制された。このことはMDVの感染初期にMDVがMeqを発現させた場合、マガンでばIFNγの発現量が鶏よりも抑えられる可能性を示唆しており、結果として、マガンでは、MDVに対する通常の免疫応答よりもT細胞の活性化が抑制され、MDVの標的である活性化T細胞の数が増えないため、活性化T細胞での感染率が下がり、発症に至らない可能性が推測された。今後、他の関連因子について検討を行う必要がある。
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