2009 Fiscal Year Annual Research Report
HBVゲノム相違を背景にした肝炎・肝癌の地理病理と病因論の展開
Project/Area Number |
21406007
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Section | 海外学術 |
Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
阿部 賢治 National Institute of Infectious Diseases, 感染病理部, 主任研究官 (60130415)
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Keywords | B型肝炎 / HBV / 国際研究 / 分子疫学 / 肝癌 |
Research Abstract |
アジアは、HBV/HCV関連肝癌の多発地域である。この多くは、40~50代の成人で発症する。一方、小児での肝癌発生も稀に観察されるが、その成因については、全く不明である。 そこで、アジア各国の協力を得て、小児原発性肝癌の実態を病理学的、分子ウイルス学的に解析した。調査対象国は、ベトナム、台湾、韓国、日本の4力国である。まず過去の症例で小児の肝腫瘍症例から得られたホルマリン固定パラフィン包埋組織を入手し、レトロスペクティブに病理組織学的診断を実施した。その結果、42例(ベトナム28例、韓国7例、台湾4例、日本3例)の小児肝癌症例を集めることが出来た。性差は男児34例:女児8例(4.3:1)、平均年齢は11±3歳であった。また対象例として、10例の肝芽腫(平均年齢4±3歳)も同様に検索した。小児肝癌例では、56%で肝硬変を伴っていた。PCR法にて、肝組織内の肝炎ウイルス遺伝子検出を試みた結果、肝癌例ではHBV DNAが36/42(86%)と極めて高率に検出できた。HCV RNAは全例で陰性であった。これに対し、肝芽腫ではHBV DNA、HCV RNA共に陰性であった。更に興味あることに、HBV pre-S遺伝子の欠損変異が90%(27/30)の症例で観察されたことである。その内訳は、pre-S2(20/27 ; 74%)、pre-S1(5/27 ; 18.5%)、pre-S1/S2(2/27 ; 7.4%)であった。驚きは、pre-S2変異がその全例で4~57番目の塩基が欠損していたことである。以上の成績から、アジアにおける小児肝癌の成因として、HBV持続感染が重要なリスクとなっていることが示唆された。更に、HBV pre-S2領域の欠損変異が発癌に深く関わっており、そのホットスポット領域と思われる欠損領域を見出すことができた。
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Research Products
(5 results)