2011 Fiscal Year Annual Research Report
HBVゲノム相違を背景にした肝炎・肝癌の地理病理と病因論の展開
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21406007
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
阿部 賢治 国立感染症研究所, 感染病理部, 主任研究官 (60130415)
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Keywords | B型肝炎 / HBV / 国際研究 / 分子疫学 / 肝癌 / 胆管癌 |
Research Abstract |
最近、HBVが肝細胞癌以外に胆管癌の発生にも関与を示唆する研究報告がある。そこで、HBV浸淫国の一つである中国における胆管癌とHBVの関係について、中国・ハルビン医科大学病理学教室(Xiaoming Jin教授)と共同で検索した。対象としたのは、中国東北部黒龍省近辺に住む中国人に発生した胆管癌症例66例(肝内胆管癌23例+肝外胆管癌43例)である。またコントロールとして、非肝疾患患者52例も併せて比較検討した。血中HBsAg陽性例は、胆管癌66例中18例(27.3%)であったのに対し、非肝疾患群では52例中2例(3.9%)と胆管癌群で有意(F<0.05)に高値を示した。さらにPCR法にて癌組織内HBV DNA(HBx gene)を検索した結果、肝内胆管癌の8例(34.8%)で陽性を示したのに対し、肝外胆管癌群と非肝疾患群の肝組織では全例陰性であった。また肝内HBV DNA陽性を示した8例は、免疫染色にて7例で肝内HBsAg陽性が確認できた。肝内HBV DNA陽性を示した8例の組織病理学的所見は、非癌部において4例では非癌部の門脈域にリンパ球浸潤、2例では肝硬変、2例では脂肪変性が観察された。肝内胆管癌の組織分類は、高分化型(1例)、中等度分化型(5例)、低分化型(2例)であった。胆管癌患者のHBV感染と非感染例において、両者に臨床的所見の差異は認められなかった。以上の所見から、肝内胆管癌の発生要因の一つとして、HBVの関与が示唆された。今後更に両者の因果関係について、発生機序も含めた詳しい研究が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究目的の一つであった、中国における胆管癌の発生要因を明らかにすることができた。またこの他の研究課題に関しても、ベトナム、タイ、台湾、米国を訪問し、現地での共同研究を実施してり、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は最終年度になるので、各国における原因不明肝癌症例患者からの肝組織収集に全力を挙げて、その全体像解明に向けて努力したい。
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Research Products
(4 results)