2011 Fiscal Year Annual Research Report
地理的空間上の人口分布に応じた自律分散ネットワークの構築法
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21500072
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
林 幸雄 北陸先端科学技術大学院大学, 知識科学研究科, 准教授 (70293397)
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Keywords | 人口分布 / 地理的空間 / 自己組織化 / ネットワーク科学 / ルーティング / トラフィック特性 / Scale-Free / Zero Range Process |
Research Abstract |
近未来の広域通信で予想されるスケーラブルに増大する利用状況に適応的なネットワークの構築法として、人口密度に比例した現実的なアクセス要求に従った基地局ノードの配置、自律分散処理に基づく効率的なルーティング、悪意な攻撃等に対しても結合耐性を強化できる障害回避戦略、渋滞発生メカニズムの解明とその解消策を探り、具体的アルゴリズムを開発することは重要課題である。昨年度までの2年間で、再帰的面分割に基づく提案モデルの基本特性として、人口密度に応じたノード配置、故障や攻撃に強い結合耐性、直線の高々2倍で抑えられる短い経路長などの優れた性質を明らかにすると共に、短いリンクが主流で経済的なリンク長分布や最大負荷のスケーリング則等を定量的に示した。今年度はさらに検討を進め以下の成果を得た。 ・インターネットなど広く現実のネットワークに潜むScale-Free構造上で、局所情報である次数のべき乗に比例して隣接ノードを選ぶ確率的ルーティングのトラフィック特性を解析し、渋滞解消に適したパラメータ値やルーティング戦略を把握した(国際学術誌1件)。 ・空間に一様分布したノード同士が一定の電波到達範囲内で結合する無線通信網の初期構成から、人口密度に比例したパケット送受信要求に基づくパケットフローでリンク淘汰される新たなネットワーク構築法を提案した。これと類似した平面上に拘束される粘菌にはないショートカット追加を施すと、短いリンクでホップ数も小さく効率的(サイズNで平均ホップ数が0(logN)のSmall-World性を満たす)で結合耐性も強化できることを示した(国際学術誌と国際会議発表各1件、招待講演を含めた国内研究発表)。 ・正方形などの自己相似なネットワーク構築法における中点分割の制約を無くした長方形分割に基づくモデルに拡張し、その階層構造について調べた(国際会議発表1件と招待講演を含めた国内研究発表)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計算機科学と統計物理の両アプローチから、近未来の通信網に適した効率的かつ結合耐性が強いネットワーク自己組織化法を考え、人口密度に従ったノード配置、自己相似分割における短い経路長や負荷軽減、Zero Range Processによるトラフィック特性解析、粘菌より優れたリンク淘汰+ショートカット法などを提案し解決してきた。但し、間接的な研究環境整備等の協力を期待した博士課程学生の途中離脱により当初の見込みが若干崩れ、計画が全て実行出来た訳ではない。
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Strategy for Future Research Activity |
提案する再帰的分割に基づくネットワーク自己組織化を確率モデルと捉えると、都市道路網やガラス破片などに普遍的に見られる面積分布に類似する特性が理論解析できそうな見通しが立ってきた。そこで、この様なある種の秩序をランダム過程から創発する基本原理を探る為、数学者との議論を経て検討を進める予定である。 一方、大量の計算量を必要とするシミュレーション実験を分散化させて効率よく行う為に、毎年少しづつ計算サーバPCを購入し拡充しているものの、同時実行に適したプロセッサ数をほぼ確保できた反面、空きスペースの枯渇問題などもあって今年度はメモリ追加などで強化する方策が妥当と考えている。
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