Research Abstract |
実世界情報プローブとは,無線携帯端末を身に着けた人間をも,細粒度の移動体プローブ(触覚)とみなし,携帯端末が備える各種センサにより取得される実世界情報をそのロケーション情報とともにリアルタイムに収集,加工し,高次実世界コンテクストの抽出に適用する手法である.プローブとなるユーザは,これらの情報を提供することへの対価として,様々なユビキタス情報サービスを享受することができるが,プローブ情報にはユーザのロケーションを始め様々な個人情報が含まれており,その収集にあたってはプライバシ保護の仕組みを慎重に検討する必要がある.本研究の目的は,サービスに公開した個人情報が悪用された場合にユーザが被る被害を抑えることにある.研究計画初年度となる平成21年度は,(1)問題の分析と評価指標の検討,(2)小規模実験プラットフォームの構築,(3)評価用実世界情報プローブサービスの実装と位置匿名化アルゴリズムの検討を並行して実施した.具体的には,先行関連研究の分析と問題点の洗い出しを進めるとともに,評価指標としてのQoS(Quality of Service)およびQoP(Quality of Privacy)の視点から,個人情報匿名化に関する議論の形式化を行った.また,公共空間を想定した屋内に小規模な実験プラットフォームを構築し,位置匿名化アルゴリズムの評価に用いる位置抽象化支援ミドルウェアを設計,実装,その基本性能を評価した.これにより,ロケーションプライバシを保護するためのインフラシステム側の条件,位置抽象化支援ミドルウェアが備えるべき要件を詳細化することができた.さらに,単純化した問題として「ユーザあるいはエリアを特定可能なサービス」を想定し,その具体例として,実世界人群行動予測,実空間雰囲気モニタリングを実装,位置匿名化アルゴリズムの基礎的評価を行った.
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