Research Abstract |
ホログラフィは3次元波面を忠実に記録・再生できる技術であり,電子ホログラフィは究極の立体テレビになり得るものと考えられている.しかし,膨大な情報量を処理しなければならず,実用化が困難な状況にある.一方,コンピュータのプロセッサは,近年,並列化が進んでいる.電子ホログラフィのアルゴリズムは並列処理に向いており,マルチコア・プロセッサが実用化に向けて有効かどうかを検証することが本研究課題の目的である.これまでに代表的なマルチコア・プロセッサであるGPUの有効性を明らかにしてきた. ただし,GPUは単精度のときに高い性能を示し,倍精度にすると性能が大幅に低減する.倍精度のマルチコア・プロセッサにGRAPE-DRチップがある.当初は天文学の数値シミュレーション専用に使用されていたが,近年では一般用途向けボードが市販されている.また,パソコンで用いられているプロセッサもマルチコア化が進んでいる.そこで,今年度は,倍精度による検証として,GPU,GRAPE-DR,POWER7プロセッサを搭載した市販のハイパフォーマンスコンピュータである日立SR16000で,それぞれホログラフィ計算を行い,比較した.倍精度においては,GRAPE-DRとSR16000がほぼ同じ高速化を示し,GPUに比べて優位であった.ただし,GPUが安価であることを考慮した価格性能比においては,GPUの方が優位であった. また,今年度はGPUを複数用いたマルチGPUシステムの研究にも取り組んだ.3枚のGPUカードを搭載したパソコンを4台接続したクラスタシステムを構築し,パソコン単体と比べて1,000倍以上の高速化に成功するなどの成果を上げた.
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