Research Abstract |
物理現象の可視化表現は流体力学の分野でいち早く他に先駆けて試みられ,可視化実験や実験を模擬したコンピュータ・グラフィックスが確立され,流れ場の解明に大きな貢献を果たしている.流体力学において可視化は流れを知る上に必要不可欠な存在であり,可視化技術の発展は必然的なことと言える.流れは計測方法により,流線,流脈線,流跡線の異なる3つの軌跡として表現される.定常状態では全ての軌跡が一致するが,非定常な状態ではそれぞれ異なる曲線となって現れる.また,相対場で観察するか,絶対場で見るかによっても,見かけ上異なった流れ場と認識される.このように同じ物理現象であっても観察の仕方により,様々な画像に変化するため,これらの違いを認識するとともに,実験計測の方法や描画方法を含めた十分な理解も要求される.これはまた,観察方法の工夫により従来得られなかった特性抽出を可能とし,現象のより深い理解に繋げられる可能も示唆している.本研究の目的は伝統的な可視化方法を基盤として,流体現象に限らず,振動やその他の物理現象について,可視化を通した分かりやすい表現方法の導出や新しい特性量を抽出することであり,新しい発見に結びつく知見として寄与することを目指している.平成21年度は研究分担者(鈴木)が製作を行ってきている可視化システムをベースに,更に改善を行い,3次元風車まわりの流脈線の描画を実施した.ここでの特徴として,回転する流体機械の流れは回転場では定常,静止場から見ると非定常な流れとなり,静止場での流脈線の描画が多大な計算負荷となるが,回転場では定常であることを利用し,計算量の大幅な軽減を可能とした点である.また,振動現象としては2次元スロッシングを数値シミュレーションで扱い,これに必要な数値計算コードの開発を実施し,可視化することでより分かり易い描画表現を試みている.
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