Research Abstract |
本研究では化学実験実施時に危険回避を実現しつつも,実験作業を通して安全技能を向上するスマート実験室の設計原理を明らかにすることを目的としており,特に意図的に多義な情報を提示することによる「非教示的な支援」を特徴とする.平成23年度は,1)情報提示における多義性と目前の危険回避効果と将来のための学習効果の関係解明,2)机上情報提示精度の向上,3)統合システム開発の3項目を中心に研究を進めた. 1)では,前年度までで効果が示唆された「3次元多義的情報提示モデル」の有効性検証実験を行った。危険回避には,多義度合いが(意味,空間,時間)=(少義,少義,少義)の組,学習効果に関しては(少義,多義,多義)の組が効果的であることが分かった.予測されるリスクに応じてこれらの組を使い分けることで,2つの相反する効果を使い分けることが可能になると考えられる.なお実験により,空間的多義性は物体付近提示と固定箇所提示をそれぞれ少義と多義とした.一方,時間的多義性は予測される危険を含む作業時のみの提示が少義,冒頭から提示し続ける場合が多義となった. 2)では,プロジェクタを用いて卓上の物体付近に情報提示する際に,密集状態でも情報と物体の関連づけの誤解を生まない情報付加方式を検討した。a)吹き出し状に線でつなぐ方式,b)線で囲む方式,c)物体に付加されているマーカーと情報の双方に共通する「色」を用いる方式,の3種を考案してシミュレーション実験を行った.情報と対象の関連づけ速度と正解率を求めた結果,c)がやや良好な結果となった. 3)では既存の基盤システムにおいて作業内容認識の安定度向上を図るとともに,1)と2)の知見を反映する改良を施した. 対外発表に関しては,国際論文誌1篇と国際会議2件,国内発表2件を通じて,「非教示的な支援」という新しい概念の研究コミュニティへの浸透を試みた.
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