Research Abstract |
本年度は,主に無順序木の編集距離についての研究を進めた.まず,既存研究では,編集距離ではなくインデル距離で,かつ,木の高さが7以上の場合にしか計算の近似困難性が保証できなかったことを指摘した.そして本研究では,インデル距離の場合には高さが2以上,もしくは次数が2以上の場合に,編集距離の場合には高さが3以上,もしくは,次数が2以上の場合にも,計算の近似困難性が保証できることを示した.一方,このように計算が困難な無順序木の編集距離計算に対して,ヒューリスティックアルゴリズムであるA^*アルゴリズムを開発して実装し,その効果を検証した.さらに,無順序木の編集距離の変種である制限付き距離,次数2距離,トップダウン距離の計算時間は,制限付き距離とトップダウン距離が0(n^2DlogD)時間,次数2距離が0(n^2d^<0.5>logd)時間である.ここで,Dは木の最大次数であり,dは木の最小次数である.本研究では,制限付き距離とトップダウン距離の計算時間を次数2距離と同じ0(n^2d^<0.5>logd)時間に改良することができた.さらに,無順序木において,一方の木Pが他方の木Tに含まれるか否かを決定する木包含問題はNP完全であることが知られているが,最近共通先祖を必ず保存するような次数2包含は0(|T||P|^<2.5>)時間0(|T||P|)領域で計算できる.本研究では,次数2包含よりも一般的な,最近共通先祖の子孫同士の包含である孤立部分木包含を定式化し,それが次数2包含と同じく0(|T||P|^<2.5>)時間0(|T||P|)領域で計算できることを示した.
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