Research Abstract |
平成21年度は,主として,絵画の色彩構成の客観的分析のために必要な感性要素を探ること,および分析に必須の画像色彩処理アルゴリズムならびにコンピュータプログラムの開発を行った.以下,研究実績を国際会議等における発表内容に即し,時系列的に述べる.(次ページの平成21年度研究成果をも参照されたい.) 2009年5月には,日本色彩学会第40回全国大会において,色彩分析に適した新しい色空間の構築の可能性を理論的に示した.また同大会において,画像の画面上の明暗変化と色彩変化の情報量(エントロピー)が色彩的特徴を表しうることを示した. 7月には渡仏し,ボルドー近郊のSt.Astierで開催された色彩応用に関する研究集会において,色空間および配色分析に役立つ新配色空間のアイディアを発表した(招待講演).同時に,研究協力者であるM.Albert-Vanel氏(元ENSAD教授,元フランス色彩連盟会長)と研究打合せを行った. 9月末には,オーストラリア・シドニーで開催された国際色彩学会(AIC)において,2色配色の与える色彩の美しさについて,2色の平均明度および明度差の影響が大きいことを示した。(この成果は,6月に日本色彩学会誌に論文として掲載予定である.)また同国際会議において,絵画の色彩構成の情報量を用いて,画家の画風(色使いの違い)が分類できることを示した. なお11月には,フランスの色彩団体CIC(Centre d'Information de la Couleur)が共同編纂している専門誌Couleurの特別記念号として,筆者の日本の伝統服飾美に対する科学的分析結果が,筆者への頌として出版された. 2010年2月末には,日本色彩学会画像色彩研究会の2009年度研究発表会にて,高次画像色彩処理の基礎となる画像の領域抽出アルゴリズムとして,階層的クラスタ化法が有効なことを示した.また同研究発表会にて,情報量を用いた絵画の色彩分析に,色彩と明暗の双方の情報量の比較がより有効であることを示した. 2010年3月には,日本色彩学会誌に,「絵画の色彩表現とその数理的分析手法」と題し,今後の研究への指針を定めるために,これまでの研究成果を要約して公表した.
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