2011 Fiscal Year Annual Research Report
声道と音源の相互作用が音声の個人性に与える影響に関する研究
Project/Area Number |
21500184
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
竹本 浩典 独立行政法人情報通信研究機構, ユニバーサルコミュニケーション研究所・多感覚・評価研究室, 専攻研究員 (40374102)
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Keywords | 音声生成 / 音源 / 声道 / 相互作用 / 個人性 |
Research Abstract |
今年度は、この研究の目的であった、「下咽頭腔が音源に音声の個人性を与える」という仮説の検証に取り組んだ。昨年度までに構築した、声道と肺の音響的影響を考慮した音源モデルに、同一被験者の5母音発声時の3次元の声道形状から時間領域差分法(Finite-Difference Time-Domain method:FDTD法)によって計算した反射関数(声門で発生した音が声道で反射するときの応答)を導入して、音源波形の変化を検討した。下咽頭腔の形状は5母音でほぼ一定しており、これが音源波形に一定した影響を与えていることは確認できたが、その影響は母音間で大きく変化する声道の他の部分が与える影響に比べてきわめて小さく、聴感上ほとんど知覚することができなかった。これは、少なくとも声道と声帯との音響的相互作用が小さい低い声では、仮説は棄却できることを示す結果となった。次に、昨年度発見した、左右の梨状窩の音響的相互作用が音源に与える影響について検討した。左右の梨状窩の相互作用を考慮した場合としなかった場合では、音源の特性は変化したが、聴感上の変化は小さかった。しかし、声道の伝達特性も変化するので、生成された音声は明らかに変化した。 さらに、声道と声帯との相互作用が大きいソプラノ歌手の高音域での声道形状もMRIで計測して、音響解析を行った。その結果、同じ母音でも音高が上がると下咽頭腔の形状は大きく変化するため、音源に一定した影響を与えることはないことが判明した。なお、その変化とは、喉頭腔から咽頭腔にかけての屈曲が小さくなって直線的になることである。この変形には声道の第1共鳴周波数を上昇させる作用がある。これは、声帯の基本周波数が声道の第1共鳴周波数と一致すると声帯振動が停止するため、これを防いで発声を続けるための身体操作の一つであると考えられる。
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Research Products
(6 results)