Research Abstract |
本年度は,まず,視聴覚素材同時提示によって喚起される感動の種類について検討した.この結果,感動の種類を,「愛情・感謝」,「崇高さ」,「心にしみる」,ならびに,「歓喜・興奮」の4種類とすることにした.次に,感動喚起実験を行った.視覚素材と聴覚素材をもとに,8組のマッチした視聴覚素材と8個のマッチしていない視聴覚素材を生成し,主観評価により感動の程度を評価した.8組のマッチした視聴覚素材は,感動を喚起すべく作成したもので,前記4種類の感動に対して2組ずつ作成した.この結果,視覚素材と聴覚素材のマッチ度が高い場合に視聴覚素材の感動の程度がより高くなることを明らかにした.また,感動のし易さは,「愛情・感謝」>「崇高さ」>「歓喜・興奮」>「心にしみる」の順と考えられることを示した.さらに,感動の種類としては,「愛情・感謝」,「崇高さ」,「心にしみる」の3つはうまく選定されていると考えられるが,「歓喜・興奮」は「情熱・躍動」と「楽しさ・爽快」に分けることも考えられることを示した. また,映像と音・音楽を同時に提示した場合にそれらの相互作用によってそれぞれを単独で提示した場合と比較して印象が強調される視聴覚素材が脳活動に及ぼす影響の解明を脳波測定により試みた.この結果,単独提示時と同時提示時の頭頂部や側頭部周辺のいくつかの部位の脳波の含有率に有意差がある可能性があるのではないかという結果が得られた.これにより,マッチしている素材を視聴しているのか,マッチしていない素材を視聴しているのかの判別が可能ではないかと考えられる. さらに,視聴覚素材提示時と閉眼で聴覚素材聴取時のα波に対してフラクタル解析を行った.この結果,視覚遮断で縮退していたフラクタル構造が,視覚刺激により縮退が解けたのではないかと考えられる結果が得られた.
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