2011 Fiscal Year Annual Research Report
特異摂動系の分岐理論に基づく心筋細胞興奮ダイナミクスとパラメータ感受性の徹底解明
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21500216
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
土居 伸二 京都大学, 工学研究科, 教授 (50217600)
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Keywords | 心臓ペースメーカ / Zhangモデル / 分岐解析 / 周辺・中心細胞 / 結合系 / 同期リズム |
Research Abstract |
前年度に引き続き,代表的分岐解析ソフトウェアであるAUTOを使用し,洞房結節のペースメーカ細胞に関するHH型モデルの大域的分岐構造を網羅的・包括的に解析した. さらに,最終年度にあたって,分岐解析結果を総合し,ペースメーカ細胞の様々なパラメータに対する感受性(ひいては薬物感受性)やロバスト性及び非線形興奮ダイナミクスの特質を洗い出した.心拍制御という目的に特化した,電気信号を用いて心筋細胞が行う制御や計算の仕組みについても議論を行った.具体的には以下を行った. ・洞房結節細胞のZhangモデルを用いて,洞房結節の中心細胞と周辺細胞それぞれについて,詳細な分岐解析を行った.洞房結節細胞の電気的興奮の性質及びパラメータ感受性の部位(中心細胞と周辺細胞)間での類似点・差異を明らかにした.特に,ペースメーカ周期の変動性に注目して解析を行った. ・洞房結節全体の解析を行うための準備的研究として,中心細胞と周辺細胞の結合系に対する分岐解析を行い,細胞間の(電気シナプス)結合により,ペースメーカ周期の変動性やその感受性がどのように変化するかを明らかにした. ・心筋細胞のHH型モデルには,イオンチャネルを通したイオンの流出入(速い現象)のみを考慮したものと,イオンポンプやイオン交換体を通した遅いイオンの流れと細胞内外のイオン濃度変化(これも遅い現象)も考慮したものがある.これらのイオンの流れは時間スケールの相当異なる現象であり,速い流れと遅い流れの両者を考慮したモデルは,数学的には特異摂動系となる(実際には,イオンチャネルの中にもやや遅いものと速いものがあり,さらに複雑なマルチスケールの特異摂動系である).特異摂動系の観点からシステムの特質を明らかにするため,比較的単純な振動子モデル(BVP,FHNモデル)を用い,単一振動子や結合系における(同期)振動リズムの調節メカニズムを解析した.
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