2009 Fiscal Year Annual Research Report
音楽的音高の聴覚表象と音高符号化の相互作用に関する研究
Project/Area Number |
21500256
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
宮崎 謙一 Niigata University, 人文社会・教育科学系, 教授 (90133579)
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Keywords | 認知的干渉 / ストループ効果 / 反応時間 / 音楽的音高 / 絶対音感 / 相対音感 / 言語的符号化 |
Research Abstract |
音高シラブル(全音階音の階名ド,レ,ミ,…)を用いて歌われた歌声を提示して,そのシラブルを追唱する実験を行うと,音高の言語的符号化に習熟している絶対音感を持つ聴き手では,音高シラブルと音高カテゴリーが一致しない場合,追唱開始が遅れるという現象がこれまでの研究で観察された.絶対音感を持たない比較群ではこのような干渉効果は見られなかったが,比較群の聴き手は音高識別が不正確であったため,この干渉効果が絶対音感保有者に特有のものと結論づけることはできなかった.そこでこの点を明らかにするために,音高識別とシラブル追唱課題を用いた新たな実験を行った.参加者が行う課題は,音高名シラブルの発音で,全音階の各音高が歌われたハイブリッド刺激に対して,発音されているシラブルを無視して音高を同定する課題と,音高を無視して発音されているシラブルを追唱する課題である.提示される刺激は,音高と音高シラブルが一致している条件と不一致の条件とがある.これらの課題のそれぞれで,実験参加者は音高名を口頭で言う命名反応と音高に対応する音楽鍵盤上のキー押しを押す反応を行った.130人の実験参加者を,絶対音感群(音高識別も正確),相対音感群(絶対音感はないが,音高識別は正確),非絶対音感・非相対音感群(絶対音感なし,音高識別不正確)に分けた.音高-シラブル一致条件にくらべて不一致条件で,音高識別のエラー率と反応時間の増大がすべての被験者群で見られた.一方追唱課題の反応時間の増大は,絶対音感群でもっとも顕著に見ら,相対音感群ではわずかだった.この結果から,音高命名の自動化が絶対音感保有者に顕著に見られる傾向であることが示唆される.
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