Research Abstract |
平成22年度は,小学生にも理解できる平易な日常語の心的動詞27語を用いて,これらの概念的な類似性を調べた。大学生33名に対し,27語の動詞すべての対,計351ペアについて"頭を使って心の活動を行うやり方やプロセスがどのくらい似ているか"を7段階評定で判断してもらった。心的動詞の類似度評定値に基づき,多次元尺度法とクラスター分析を行った。その結果,多次元尺度法での2次元解の当てはまりは優れなかった。2次元プロットを詳しく見ると,第1次元では"計画を立てる,決める,選ぶ"などが高く"覚える,習う,読む"などが低く布置され,この次元が不確実性を表すことが示唆されたものの,欧米語で高い不確実性を示す"調べる,確かめる,探す,質問する"などが散逸していた。第2次元では"気づく,見る,発見する,観察する"が高い値,"説明する,覚えている,知っている,思い出ず'が低い値を示し,情報処理を表していると推察された。クラスター分析では,大きく3つのコンポーネントが見いだされた。第1は"確かめる,質問する,比べる,見る,聞く,読む"などからなり,入力に関わる動詞群といえた。第2は"選ぶ,決める,計画を立てる,解く,考える,予想する"など情報処理に関わる動詞群であったものの,欧米語では明確に現れる構成的処理と非構成的処理とに分かれることはなかった。第3は"わかる,説明する,覚えている,知っている,思い出す"などであり,記憶のコンポーネントといえる。以上の結果は,英語やドイツ語などの欧米語では不確実な情報に基づく非構成的な心的活動を示す動詞が明確に取り出されず,心的動詞で表される心的活動が日本人と欧米人とで異なる可能性を示している。
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