2011 Fiscal Year Annual Research Report
日本語話者の素朴心理学:心的動詞の意味構造とテクスト内語使用
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21500257
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Research Institution | Joetsu University of Education |
Principal Investigator |
内藤 美加 上越教育大学, 大学院・学校教育研究科, 教授 (00212077)
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Keywords | 素朴心理学 / 心的動詞 / 拡張性判断 / 多次元尺度法 / クラスター分析 |
Research Abstract |
平成23年度は前年度に用いた日常語の心的動詞27語に「見つける」を加えた計28語について,それらの拡張性を調べた。大学生33名に各動詞2文ずつ(「覚える」については「記憶する」と「体得する」の2つの意味ごとに2文計4文)計58の動詞の意味を日常的な活動で表す短文(例えば,「決める」に対し「どうしようか迷ったあげく,結局行くのをやめること」)を提示し,各文の心の活動に当てはまる動詞を28語から自由に選んでもらった。58の短文にターゲット動詞を選択した平均使用率は92.5%,各短文に使用した動詞は平均8.96個(15.5%)であった。次に58の全短文を通じて各動詞を選んだ人数をもとに各動詞間の相関係数を算出し,類似性マトリクスとした。これらについて多次元尺度法とクラスター分析を行った。その結果,多次元尺度法での2次元解の当てはまりは比較的よかった。プロットを見ると,第1次元は"覚える""わかる""習う"などが低い値を,"選ぶ""比べる""決める"などが高い値をとり,確実性を示すといえた。一方第2次元は"説明する""思い出す""覚えている"などが低い値を,"確かめる""比べる""調べる""探す""読む"などが高い値を取った。これらは欧米の先行研究や22年度の類似性判断での第2(情報処理入出力)次元に付置された動詞とは一致しなかった。さらにクラスター分析では,相関係数の実測値を用いた場合には2つのコンポーネントしか得られず,相関係数のMDSによる予測値を用いた場合に3つのコンポーネントが得られた。しかし,3つのうち欧米の先行研究や22年度類似性判断と同様の結果は入力コンポーネントのみであり,それ以外の2つのコンポーネントは情報処理や記憶といった明確な動詞群から構成されるものではなかった。日本語動詞の拡張性判断では明確な概念的まとまりは現れなかった。
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