2010 Fiscal Year Annual Research Report
意味の認知モデルと神経心理学的症候との対応に関する基礎的研究
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21500260
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
小森 憲治郎 愛媛大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (30294789)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福原 竜治 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (60346682)
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Keywords | 認知科学 / 神経科学 / 脳神経疾患 / 認知症 / 情報システム / 脳・神経 / 認知神経心理学 / 意味記憶障害 |
Research Abstract |
欧米で理論化されている規則的な読みの語(規則語)や実在しない単語(非語)を読むことができる一方で、例外的な読みを持つ語(例外語)の読みが障害され、規則化錯読が出現する表層失読は、使用言語を越えた語彙レベルの意味障害と考えられる(Patterson, 1995 ; Fushimi, 2003)。 読みの過程に語彙と非語彙の二経路を想定する二重経路モデルでは、語彙経路の損傷に対して非語彙経路が保たれることにより、低頻度例外語に規則化錯読が出現すると予測する。一方、文字、音韻、意味の3層の相互連結によって読みの過程を説明するトライアングルモデルでは、意味の損傷により文字→音韻が苦手とする低頻度例外語の音読が障害され、表層失読が現れると仮定する。この二つのモデルの最大の争点は語の読みに「意味」の関与を必要とするか否かであり、意味障害と表層失読の共起が両学説間の最大の関心事となっている。欧米では、Patterson (2006)やWoolam (2007)における意味性認知症(SD)多数例の検討から、表層失読の出現に意味が関与するというモデルの正当性が立証されている。 われわれは、日本語における漢字語音読の研究から、すでにSD多数例における表層失読を確認してきたが(Fushimi, 2009)、今年度はさらに意味に直接関与する呼称・語-線画照合課題と、課題の遂行に意味の直接的関与を必ずしも想定する必要のない音読や語彙判断課題成績との関連性を調べた。その結果、重症度の異なるのべ16例のSD例の検討から、低頻度(親密度)語の音読および語彙判断の成績と、直接的意味課題との成績間に相関関係を認め、ここでも表層失読の原則を確認できた。すなわち日本語を使用するSD例においても、語彙レベルの損傷の出現に、意味障害が関与しているという事実を明らかにすることができた。
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Research Products
(18 results)