2011 Fiscal Year Annual Research Report
意味の認知モデルと神経心理学的症候との対応に関する基礎的研究
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21500260
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
小森 憲治郎 愛媛大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (30294789)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福原 竜治 愛媛大学, 医学部附属病院, 講師 (60346682)
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Keywords | 意味性認知症 / 表層性失読 / 語義失語 / 典型性 / 頻度効果 / 語彙性判断 / 中核的意味課題 / 前意味課題 |
Research Abstract |
われわれは側頭葉前方部の限局性萎縮に伴う意味記憶の選択的障害例である意味性認知症(semantic dementia : SD)の言語症状を、認知モデルに基づき仮説検証をおこなってきた。これらの一連の研究は、欧米において仮説検証が進んでいる表層性失読とよばれる現象が、日本語話者における語義失語といかに関連づけられるかという研究に始まり、SDの語彙の様々な側面に意味の崩壊がどの程度に影響しているかを明らかにする試みにも着手した。語彙を多面的に評価するために、線画呼称・線画と単語の指示照合・線画連合課題のような語ないし線画の意味理解が必須の意味中核課題と、語彙性判断や音読といった単語の音韻表象すなわち語形や文字など、必ずしもそれ自体が意味の関与を必ずしも必要としない前意味的課題から構成された多面的課題を用いて、複数のSD例に時期を変えて複数回実施した結果について検討した。その結果、中核的意味課題のみならず、初期には障害の認められなかった語彙性判断のような前意味課題や高頻度語の音読課題においても、意味の進行過程に伴って低頻度ないし非典型的特徴をもつ対象の認知が低下するという結果を得た。すなわち低頻度/非典型的な特徴をもつ対象ほど意味の喪失に対して脆弱となる表層性失読のモデルに従うことが認められた。また多数のSDの臨床症状を時間軸上に抽出する検討を通して、呼称と語義理解の障害という言語症状がすべての症状に(1-2年)先行して出現し、相貌や物品の認知障害が顕著となる時期(3-5年)に行動障害が現れ、その後(5年以降)ADL面の障害が出現するというSDの臨床経過の特徴を明らかにした。
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Research Products
(11 results)