2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21500264
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
生塩 研一 近畿大学, 医学部, 助教 (30296751)
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Keywords | 時間認知 / 時間知覚 / 大脳生理学 / 電気生理学 / 前頭前野 / 線条体 / 大脳基底核 / 霊長類 |
Research Abstract |
私は脳がどうやって時間の長さを計っているのかについて、サルを使って調べている。注目している時間長は認知活動と関係の深い数百ミリ秒から2秒程度である。前年度までは視覚刺激による時間弁別課題を実験動物に与えて、課題遂行中の前頭前野と線条体のニューロン活動を記録してきた。しかし、時間は視覚でも聴覚でも同じであり、脳内で時間情報を抽出しているはずである。そこで、これまでの視覚刺激による実験結果を詳しく検討するため、また、より純粋な脳の時間長情報処理過程を調べるため、視覚刺激と聴覚刺激を混ぜて時間長を呈示する実験を行った。ちなみに、複数種の感覚刺激を用いた時間長情報処理に関する単一ニューロンレベルでの記録実験は世界初である。今回、視覚刺激としては緑色の四角で、聴覚刺激は2000Hzの純音で与えた。2つの時間長を引き続いて呈示した後、より長い時間呈示された刺激を選択すると正解とした。選択する際は、1番目の刺激を青、2番目の刺激を赤に割り当てる訓練により、刺激の順番を色で選択させた。呈示する時間長の長短の順や視覚刺激と聴覚刺激の別はランダムとした。そして課題遂行中の前頭前野のニューロン活動を細胞外記録法で詳細に調べた。前頭前野は全ての感覚情報が送られる場であり、感覚種によらない情報処理がなされていることが期待された。実験の結果、視覚刺激に応答するニューロンが多く、聴覚刺激に応答するニューロンは少なかった。何より驚いたのは、視覚と聴覚の両方に応答したニューロンが聴覚刺激応答ニューロンと同じ程度にしか検出されなかったことだ。このように、高次情報処理を担う前頭前野においてもなお、視覚刺激と聴覚刺激を別々に処理されていることが分かった。つまり脳が時間を感覚種に依存しない抽象的な量として処理していないことがと推察される。研究成果を日本生理学会大会と日本神経科学会大会において発表した。
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