2010 Fiscal Year Annual Research Report
Runxファミリー転写因子によるショウジョウバエ嗅覚神経細胞のサブタイプ分化機構
Project/Area Number |
21500302
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
遠藤 啓太 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助教 (40425616)
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Keywords | 嗅覚神経細胞 / 細胞運命決定 / Lozenge / Runx / 神経前駆細胞 / 経時的な発現量の変化 |
Research Abstract |
キイロショウジョウバエの嗅覚神経系では、それぞれ異なる匂い受容体を発現する約50種類の嗅覚神経細胞が存在する。これら嗅覚神経細胞は、発生中の触角原基において、約400個の感覚器前駆細胞が、それぞれ3回の細胞分裂を行うことで生み出される。単一の感覚器前駆細胞は1~4種類の嗅覚神経細胞を生み出すことから、50種類の嗅覚神経細胞を生み出すためには、感覚器前駆細胞も既に20種類以上の異なる運命を獲得していることが必要である。 昨年度までの研究から、この感覚器前駆細胞の運命決定にはLozengeという転写調節因子が量依存的に関わっていることが明らかになった。また、発生中の触角原基におけるLozengeの発現の空間的分布に領域差は見られない一方で、その発現量は経時的に減少することが示された。したがって、感覚器前駆細胞の分化の時期の違いがLozengeの量の違いにつながり、その結果、異なる運命が獲得されていることが示唆された。 本年度は、この可能性を検証するために、異なる感覚器前駆細胞の分化のタイミングをクローン解析の手法を用いて調べた。その結果、感覚器前駆細胞の分化のタイミングはその運命によって異なり、遺伝的に決まった順序に従っていることが明らかになった。さらに、この分化のタイミングの順序と、それぞれの感覚器前駆細胞の分化に必要なLozengeの量には相関があり、Lozengeを多く必要とする運命ほど早い時期に分化し、あまり必要としない運命ほど遅い時期に分化することが明らかとなった。以上の結果から、感覚器前駆細胞の多様な運命は、その分化が発生過程にわたって繰り返し起こると共に、その過程でLozengeの量が減少することで獲得されることが明らかになった。これは、「転写調節因子の経時的な量の変化による末梢神経細胞の運命の多様化」という新奇の細胞運命決定機構である。
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