2011 Fiscal Year Annual Research Report
Runxファミリー転写因子によるショウジョウバエ嗅覚神経細胞のサブタイプ分化機構
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21500302
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
遠藤 啓太 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助教 (40425616)
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Keywords | 嗅覚神経細胞 / 細胞運命決定 / Notchシグナル / Hamlet / クロマチン / 非対称分裂 / エピジェネティックス |
Research Abstract |
キイロショウジョウバエの嗅覚神経系では、それぞれ異なる匂い受容体を発現する約50種類の嗅覚神経細胞が存在する。この嗅覚神経細胞の多様性は、発生中の触角原基において、約400個の感覚器前駆細胞が、それぞれ3回の細胞分裂を行い、最大4種類の細胞運命を生み出すことで獲得される。 本年度の本研究では、当初研究対象としていた転写調節因子Lozenge分子に加え、クロマチン調節因子であるHamlet分子が嗅覚神経細胞の分化過程に関わるという新たな知見が得られたことから、この分子の果たす機能の詳細について解析を行った。その結果、個々の感覚器前駆細胞の行う3回の細胞分裂は全て非対称分裂であり、それぞれの分裂で生み出された娘細胞の間でNotchシグナルの非対称な活性化が起こることが明らかになった。したがって、Notchシグナルに依存した細胞の運命決定機構を繰り返し用いることで、単一の感覚器前駆細胞から生み出される嗅覚神経細胞の種類を最大4種類に多様化させていることが示された。また、Hamlet分子はNotchシグナルの標的遺伝子の発現を細胞分裂特異的に修飾し、その結果として、同じNotchシグナルが細胞分裂によって異なる細胞運命を生み出していることが明らかになった。さらに、このHamlet分子によるNotch標的遺伝子の修飾は、その遺伝子領域のクロマチン構造を調節し、標的遺伝子のNotchシグナルに対する応答性を変化させることで起こることが明らかになった。. 現在まで、遺伝子発現の多様化とその結果としての細胞運命の多様化は、主に、シグナルの違いや、複数のシグナルの組み合わせの違いで説明されてきたが、本研究結果は、「標的遺伝子のシグナルに対する応答性の違いが多様な細胞運命を生み出す」という、細胞運命決定機構における新奇の概念を提起するものである。
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Research Products
(4 results)