2011 Fiscal Year Annual Research Report
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21500310
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
森本 高子 東京薬科大学, 生命科学部, 准教授 (10311648)
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Keywords | 行動神経科学 / ゆらぎ / ショウジョウバエ / 視覚 / 視運動反応 / 行動選択 / 忌避物質 / 誘引物質 |
Research Abstract |
複数の情報を含んだゆらぐ環境からの情報に対して、生物はどのように反応し、最適な行動を選択するのか、その神経機構を明らかにするため、以下のようなショウジョウバエの実験系を用いた研究を実施し結果を得た。 1、成虫視覚系 これまでに、視運動反応はノイズに対して頑強性を有していること、注意欠損の変異体では、頑強性が失われることが分かった。このことから、中枢神経系による視覚系への修飾機構が考えられた。本年度は、この修飾に関わる脳部位の候補を抑制し、ノイズに対する頑強性を測定した。その結果、脳中心体上部の関与が強く示唆された。この部位は、脳全体の覚醒レベルとも関与する重要な部位である。従って、この部位は、ショウジョウバエ脳における意識・注意に関わる部位である可能性が高い。また、モデルによる解析も行ない、両目からの入力を考えた再帰的な神経回路の理論解析を行なったところ、ノイズの頑強性が説明できる双極性の安定構造を持つ神経回路の存在が示唆できた。実験とモデル研究と組み合わせ、実際に脳のどの部位が、どのように修飾し、パラメーターを変えることによって、視覚システムの特性が表現できるのかについて明らかにしていきたい。 2、幼虫の意思決定機構 幼虫に、誘因的に働く刺激と忌避的に働く刺激を同時に与え、忌避的物質を超えないと、誘引物質にたどり着けないような行動選択系を確立した。この結果、野生型の幼虫の中に、忌避物質があると、誘引物質のほうに向かうのをやめる個体と、忌避物質が存在しても、誘引物質があればそちらに向かう幼虫が存在することが明らかになった。この2種類のタイプの幼虫は、忌避物質に対する反応に違いが見られた。また、アミン系伝達物質の一つを抑制すると、忌避物質に対する反応性の低下が見られた。これらのことから、アミン系伝達物質は忌避物質に対する反応を調節することで、行動決定機構に関わる可能性が得られた。
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