2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21500313
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Research Institution | Osaka Bioscience Institute |
Principal Investigator |
黄 志力 (財)大阪バイオサイエンス研究所, 分子行動生物学部門, 研究副部長 (10321704)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
裏出 良博 (財)大阪バイオサイエンス研究所, 分子行動生物学部門, 研究部長 (10201360)
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Keywords | アデノシン / 睡眠 / 遺伝子操作 / マウス / ラット |
Research Abstract |
ATPの代謝物であるアデノシンは、A1受容体(R,A1R)とA2ARを介して、睡眠を調節することが報告されている。我々は、A2ARを活性化すると強い睡眠が誘発されることを発見した。一方、A1Rが活性化すると、コリン性の前脳基底核やヒスタミン性の結節乳頭核、オレキシン神経を抑制し、睡眠を誘発することは広く知られている。しかし、A1R作動薬の脳内投与では、睡眠/覚醒状態への明確な効果は見られない。そこで我々は、睡眠中枢と考えられる腹側外側視索前野(VLPO)のA1Rを活性化すると、睡眠活性を持つ神経が阻害され、睡眠量が減少するのではないかとの仮説を立てた。選択的A1R作用薬であるN6-シクロペンチルアデノシン(CPA)をラットのVLPO内へ微小注入すると、自発的な睡眠覚醒中及び6時間断眠後の回復睡眠中におけるノンレム(non-REM,NREM)睡眠とレム睡眠両方の顕著な減少が見られた。VLPO内にCPAを局所投与すると、ノンレム睡眠とレム睡眠の潜伏期が顕著に延長し、6時間断眠後の回復睡眠中のノンレム睡眠量も減少した。CPAを野生型マウスのVLPO内に局所投与すると、ラットの場合と同様の結果を得た。しかし、A1R欠損マウスの場合には、覚醒は全く認められなかった。一方、選択的A1R拮抗薬である1,3-ジメチル-8-シクロペンチルキサンチン(CPT)をラットのVLPO内に微小注入するとノンレム睡眠とレム睡眠が両方とも増加した。免疫組織染色を施すと、A1RがVLPO内に僅かに発現することが認められ、断眠によりVLPOにおけるA1Rの発現が増加することが判明した。これは、アデノシンがVLPOのA1Rを介して睡眠覚醒の自発的及び恒常的制御において意味づけた最初の研究である。この研究結果は、これまでのA1Rが睡眠を誘発するという通説を覆し、VLPOのA1Rは覚醒を維持することを証明した。
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