2011 Fiscal Year Annual Research Report
構造的可塑性仮説に基づくうつ病の発症・治療機序についての基礎研究
Project/Area Number |
21500328
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
神野 尚三 九州大学, 大学院・医学研究院, 教授 (10325524)
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Keywords | ミクログリア / アストロサイト / ニューロン・グリア連関 / 海馬 / 舌下神経 / ミノサイクリン / グルタミン酸 / 神経変性 |
Research Abstract |
運動神経の軸索を切断すると、ミクログリアによるシナプス入力の遮断(synaptic stripping)が生じる。従来からこの現象は、神経細胞の保護・再生などに重要な役割を果たしていると考えられてきた。本年度の研究では、舌下神経切断モデルを用いて、神経細胞死とシナプス伝達、グリア細胞の活性化の関連についての解析に取り組んだ。最初に、マウス(C57BL/6)では、軸索切断後に神経細胞死が起こるのに対して、ラット(Wistar)では細胞死は認められないことを確認した。次に、スライスパッチ記録を行い、微少シナプス後電流の頻度がマウスよりラットの方が有意に低いことを見出した。続いて、運動神経の細胞体周囲を取り囲んでいるアストロサイトとミクログリア、シナプス前終末について、共焦点顕微鏡による超微形態解析を行った。定量的画像解析によって、シナプス部におけるアストロサイトの突起の入り込みは、マウスよりラットの方が有意に多く、ミクログリアの突起の入り込みはラットよりマウスの方が多いことが明らかになった。また軸索切断ラットでは、シナプス外部においてもアストロサイトによる神経細胞体の取り囲みが増加していたのに対して、マウスではそのような変化は認められないことが示された。これらから、先行研究とは異なり、ミクログリアではなく、アストロサイトによるシナプス入力の遮断が、神経細胞死の抑制に関わっている可能性が提示された。また、シナプス外部におけるアストロサイトの突起の増生は、過剰なグルタミン酸の取り込みによって、神経細胞の保護に関わっていることも示唆された。本研究の結果から、ニューロン・グリア連関におけるミクログリアとアストロサイトの反応性の違いは、神経細胞死やシナプス伝達の可塑的制御を理解する上で、重要な標的となりうると考えられる。
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Research Products
(10 results)