2009 Fiscal Year Annual Research Report
代謝解剖学的アプローチによるガス分子受容・生成系を標的とした脳血流制御機構の解明
Project/Area Number |
21500353
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
梶村 眞弓 Keio University, 医学部, 講師 (10327497)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 眞実 自治医科大学, 医学部, 准教授 (60212859)
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Keywords | 一酸化炭素 / heme oxygenase / 脳血流循環代謝 / 硫化水素 / 低酸素応答 |
Research Abstract |
低酸素時における血管拡張反応は脳での重要な局所血流調節機構のひとつであるが、その全貌は未解明である。そこで本研究では脳での酸素センサー分子の候補として頚動脈小体の酸素センサー分子であり一酸化炭素(CO)生成酵素であるheme oxygenase(HO)-2と、COの標的分子として硫化水素(H_2S、強力な血管拡張物質)の生成酵素であり脳での高発現が認められたcystathionine β-synthase(CBS)に着目し「脳組織においてHO-2は酸素センサーとして機能し、低酸素時にCO生成を減少させることによりCBSの活性を定常的な抑制から解除し、H_2S産生量を増加させ局所の血流を上昇させる。」という仮説の立証を試みた。まずfull lengthのラットCBS遺伝子を大腸菌に発現・分離精製し、in vitroでCOのCBS活性に及ぼす効果を検証した。その結果、数μMの低濃度のCOがCBS活性を阻害したのに対し、NOでは数百μMの高濃度でも阻害がかからないことから、CBSがCOの特異的なレセプタであると考えた。次にCOによる脳局所血流調節機能の修飾作用を検証するためCBSが高発現するP15-P18のステージの小脳のスライスを作製し,COによる細動脈血管作動性を径20micron以下の細動脈を対象として解析した。HOの拮抗阻害剤であるzinc protoporphyrin-IXを灌流し内因性のCO産生を抑制すると、血管径は60分間で約1.6倍まで一定の速度で徐々に拡張した。一方CBSのKOマウスを用いて同様のCO産生阻害を行ったところ、野生型のマウスで見られたような血管拡張は惹起されず,COに対する感受性は完全に消失した。また、低酸素時の血管拡張反応にCOによるCBSの活性調節が関与しているかを、酸素濃度低下時の小脳のスライスの細動脈で検証したところ、HO-2 KOマウス、CBS KOマウスでは野生型マウスに比べ低酸素応答能が低下していた。さらにHO-2とCBSの免疫組織染色を行った結果、HO-2は神経細胞に、CBSはグリア細胞に強い発現が見られた。また観察対象とした細動脈周辺にはNG2陽性の周皮細胞が認められた。これら結果は仮説を支持するものであり、中枢神経系で産生されるCOとH_2Sによる神経、グリア、周皮細胞に亘るシグナル伝達が、脳局所血流調節の一機序であることが示唆された。
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Research Products
(8 results)