2010 Fiscal Year Annual Research Report
ミクログリアの機能切換えスイッチに関する基礎的研究
Project/Area Number |
21500357
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Research Institution | Soka University |
Principal Investigator |
中嶋 一行 創価大学, 工学部, 教授 (50175494)
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Keywords | ミクログリア / スーパーオキシドアニオン / TNFα / 貪食 |
Research Abstract |
二年目の目標のひとつは、ミクログリアを傷害性細胞に誘導するメカニズムを調べることであった。傷害性を表す指標として、傷害性サイトカインであるTNFαをとりあげ、この誘導に関わる分子の探索を行った。リポ多糖(LPS)によるTNFαの誘導系を用いて、種々のシグナル分子の関わりを調べた結果、気体分子であるスーパーオキシドアニオン(SOA)がTNFαの誘導に強く関与することがわかった。すなわち、LPS誘導性のTNFαは、SOAの消去剤によって抑制され、TNFαの誘導に必要なMAPキナーゼ(JNK、p38)の活性化もSOA消去剤によって抑制されることが明らかになった。また、SOA供与体をミクログリアに添加すると、TNFαの誘導が見られ、JNKとp38の活性化も引き起こされた。このように、ミクログリアを傷害性細胞に誘導するトリガーとして、SOAの重要性が明らかになった。[論文投稿中] ふたつめの目標は、ミクログリアを貪食性に変化させる機構を明らかにすることであった。脳内でミクログリアが貪食性細胞に変化するのは、死細胞が生じた時であるので、まず神経細胞死を誘導するインビボのモデル系を作成する実験から開始した。論文上、神経細胞死を引き起こす化学物質は入手できず、適当なモデル系の作成は難渋したが、最近、蛋白合成阻害剤を使って、脳内の神経細胞に細胞死を引き起こすことに成功した。従って、今後ミクログリアの貪食関連分子の探索が可能になると考えられる。また、培養ミクログリアを使用した系では、プロテインキナーゼC(PKC)が貪食活性に深く関与することが明らかになったので、その周辺のカスケードを解析することも可能になった。以上、今年度は、ミクログリア貪食能の解析に必要なインビボのモデル系を確立することができ、貪食に関連するシグナル分子としてPKCを検出することができた。
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