Research Project
脳黒質に存在するニューロメラニン(NM)は皮膚のメラニンとは対照的にその構造や機能の複雑さ、単離の困難さ、適切な生化学的モデル化合物がないなど不明な点が多い。我々は、DOPAとCysから生成するフェオメラニンの初期生成過程の解析を昨年度報告した(Wakamatsuら,PCMR,22,474-486,2009)。それによると、最初に生成するシステイニルドーパは、さらに酸化されてジヒドロ-1,4,-ベンゾチアジン-3-カルボン酸(DHBTCA)を生成し、その後、o-キノンイミン体を経て、ベンゾチアジン骨格を有するフェオメラニンになり、徐々にベンゾチアゾール骨格に変換することが示されている。本年度は、NMの生合成経路を解明するためドーパミン(DA)とシステイン(Cys)の酸化から生成するNMの中間体を合成し、この合成品を用いてNMの生合成経路を考察した。1)5-S-CysDAの合成:pH6.8の緩衝液中、DAとCysをチロシナーゼ酸化し、陽イオン交換樹脂で精製した。2)DHBT-1の合成:5-S-CysDAに2M-NaOHを加え、pH9で10分反応後、陽イオン交換樹脂で精製した。3)ODHBT-1の合成:5-S-CysDAに0.1M-NaOHを加え、1時間反応後、陽イオン交換樹脂で精製した。4)TTCAとTDCAの合成:DAとCysから合成したCysDAメラニンに1M-NaOHを加え、4日間H_2O_2酸化し、陽イオン交換樹脂、つづいてHPLC分取により精製した。5)Bz-1の合成:pH6.8の緩衝液中、5-S-CysDAにFeNH_4(SO_4)_2、(NH_4)_2S_2O_8を加え、室温で3時間反応後、陽イオン交換樹脂で精製した。6)DAとCysを1:0.5の比率で生理的条件下(pH7.4、37℃)チロシナーゼ酸化し、反応時間1分、3分、5分、15分、30分、1時間で反応液を分取し、HPLCへの直接注入による中間体の確認および反応溶液の化学反応により、生成物の解析を行った。反応は極めて早く進行した。最初に生成するCysDAは3分で消滅し、それに伴ってODHBT-1、Bz-1が徐々に生成した。反応が早いために当初予想していたDHIBT-1は検出されなかった。H_2O_2/K_2CO_3酸化およびHI水解により、メラニン分解産物のPDCA、TDCA、TTCA、Bz-1が徐々に増加した。一方、Cys-DA由来の4-AHPEAは減少した。一方、TTCA/PDCA比は徐々に増加し、4-AHPEA/PDCAは減少した。以上の結果は、NMは、最初にCys-DAメラニンが生成し、Cysの枯渇後、Cys-DAメラニンの顆粒上にDAメラニンが沈着するcasing modelを指示する結果であり、反応の進行とともにベンゾチアジン骨格を持つNMからベンゾチアゾール骨格を持つNMに変換されることがわかった。
All 2009
All Journal Article (17 results) (of which Peer Reviewed: 17 results) Presentation (7 results)
Pigment Cell Melanoma Res 22
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