2010 Fiscal Year Annual Research Report
神経軸索ガイダンスを制御する成長円錐形質膜の非対称性エンドサイトーシスの研究
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21500361
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
上口 裕之 独立行政法人理化学研究所, 神経成長機構研究チーム, チームリーダー (10233933)
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Keywords | 軸索 / 成長円錐 / ガイダンス / エンドサイトーシス / エキソサイトーシス / カルシウムイオン / クラスリン / カルシニューリン |
Research Abstract |
伸長過程にある軸索突起の先端部(成長円錐)は、細胞外環境に存在するガイダンス因子を認識して標的へ到達し、正しい神経回路を構築する。成長円錐での非対称的Ca^<2+>シグナルが形質膜の取り込み(クラスリン/ダイナミン依存性エンドサイトーシス)を促進し、その結果として反発性軸索ガイダンス(成長円錐が反発性因子を避ける方向に旋回すること)が駆動される仕組みを研究した。実験は、ニワトリ胚由来の脊髄感覚神経細胞の初代培養系を用いて行った。反発性Ca^<2+>シグナルはCa^<2+>依存性タンパク質脱リン酸化酵素カルシニューリンを介してクラスリン/ダイナミン依存性エンドサイトーシスを促進することを発見し、成長円錐の反発性旋回もカルシニューリン活性を必要とすることを証明した。しかし、誘引性Ca^<2+>シグナルはクラスリン/ダイナミン依存性エンドサイトーシスに影響を及ぼさず、カルシニューリン活性あるいはクラスリン/ダイナミン依存性エンドサイトーシスを阻害しても誘引性旋回は抑制されなかった。誘引性Ca^<2+>シグナルがクラスリン/ダイナミン依存性エンドサイトーシスを促進しないのは、誘引性Ca^<2+>シグナルに含まれるCa^<2+>誘発性Ca^<2+>放出(リアノジン受容体を介する小胞体からのCa^<2+>放出)がタンパク質リン酸化酵素cdk5を介してエンドサイトーシスを阻害することに起因した。さらに、成長円錐での非対称的な膜動態は旋回を誘発するための十分条件であることを証明し、エンドサイトーシスとエキソサイトーシスがそれぞれ反発と誘引を駆動するという基本原理を発見した。以上の成果を、米国の科学誌「Neuron(ニューロン)」に発表した。
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