2011 Fiscal Year Annual Research Report
非ヒストンタンパク質の可逆的アセチル化不全と不安障害
Project/Area Number |
21500364
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Research Institution | Institute for Developmental Research, Aichi Human Service Center |
Principal Investigator |
川口 禎晴 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所, 発生障害学部, 主任研究員 (00450833)
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Keywords | 不安障害 / 抗うつ薬 / タンパク質の翻訳後修飾 / アセチル化 / 脱アセチル化酵素 / HDAC6 / ノックアウトマウス / セロトニン神経細胞 |
Research Abstract |
我々は非ヒストンタンパク質の脱アセチル化酵素であるHDAC6のノックアウトマウスにおいて不安障害と関連した行動異常を観察した。このマウスを研究モデルとして用い、HDAC6欠損による行動異常の実態を解明しHDAC6依存の可逆的アセチル化制御がどのように不安障害と関連するかを分子レベルで明らかにする。これまでの行動薬理学的解析によりHDAC6ノックアウトマウスの「抗うつ」様行動異常は既知抗うつ薬とは異なるメカニズムで引き起こされていることが考えられた。その実態を探る目的で本年度はHDAC6のマウス脳内発現部位の特異性を免疫組織化学的手法により調べたところ、中脳の縫線核にあるセロトニン神経細胞に極めて多く発現していることが明らかになった。一方で、HDAC6の脳内標的分子として見出されたピルビン酸脱水素酵素複合体についてその機能のHDAC6欠損による影響を検証するためにマウス脳各部位のピルビン酸量を指標に調べたところ、野生型マウスと比べてHDAC6ノックアウトマウスの縫線核部位から得られたサンプルにピルビン酸の蓄積を見出した。以上の結果からHDAC6ノックアウトマウスの脳では縫線核セロトニン神経細胞においてピルビン酸脱水素酵素の機能不全に伴うミトコンドリア機能異常が起きていると推察され、これがセロトニン神経系の機能不全を引き起こし不安障害と関連した行動異常をもたらす原因であることが考えられた。
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