2011 Fiscal Year Annual Research Report
ラット脊髄後角における痛み伝達のガラニンによる二相性制御の細胞レベル機序
Project/Area Number |
21500370
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
熊本 栄一 佐賀大学, 医学部, 教授 (60136603)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 亜美 佐賀大学, 医学部, 准教授 (70336139)
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Keywords | ガラニン / 脊髄後角 / パッチクランプ法 / ラット / 痛覚情報伝達 / 興奮性シナプス伝達 / 抑制性シナプス伝達 / ガラニン受容体 |
Research Abstract |
脊髄腔内投与のガラニンが濃度に依存して痛み行動を二相性に制御することはよく知られている。本研究の目的は、そのガラニン作用のシナプスレベル機序を明らかにすることであり、皮膚末削こ与えられた痛み情報の伝達の制御に重要な役割を果たす脊髄後角の第II層(膠様質)のシナプス伝達に及ぼすガラニンの作用を調べている。当該年度では、前年度に引き続いて、成熟雄性ラット脊髄横断スライス標本の膠様質ニューロンヘブラインド・ホールセル・パッチクランプ法を適用し、ガラニンが自発性の興奮性シナプス伝達、Aδ線維やC線維の刺激による単シナプス性の興奮性シナプス伝達、さらに、抑制性のGABAやグリシンを介するシナプス伝達に及ぼす作用を調べた。当該年度が最終年度であったため、シナプス伝達に及ぼすガラニン作用から、ガラニンの濃度に依存した痛み行動の二相性制御に関する考察も行った。自発性および神経刺激誘起の抑制性シナプス伝達はガラニンにより影響を受けなかったので、抑制性シナプス伝達はガラニンの痛み伝達制御に無関係であると考えられた。ガラニンによる自発性EPSCの発生頻度の増加作用はGalR2/3作動薬によっても見られ、そのEC_<50>値は2nMである一方、それの膜過分極誘起作用はGalR1作動薬によっても見られ、そのEC_<50>値は44nMであった。これらの結果より、ガラニンは低い濃度ではGalR2/3を活性化して膠様質ニューロンの膜興奮性を促進する一方、高い濃度ではGalR1を活性化してその膜興奮性を抑制すると推察された。一次求心性のAδ線維やC線維から膠様質ニューロンへの単シナプス性EPSCはGalR2/3作動薬により抑制されたことより、ガラニンはGalR2/3を活性化して皮膚末梢から膠様質ニューロンへの興奮性入力を抑制すると考えられた。これらがガラニンの痛み伝達制御の二相性を説明できることが示された。
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Research Products
(53 results)