2010 Fiscal Year Annual Research Report
脳海馬における記憶・学習神経回路の解析:単一苔状線維シナプス可塑性のメカニズム
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21500372
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
森 正弘 神戸大学, 医学研究科, 准教授 (60294203)
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Keywords | 神経科学 / シナプス / 神経回路 / 脳組織培養 / 海馬 |
Research Abstract |
脳海馬は、記憶の貯蔵と消去の鍵となる部位である。その海馬神経回路を構成する苔状線維シナプスの可塑性のメカニズムに迫り、海馬における記憶・学習回路の特性およびその調節機序を解明することは大変重要な課題である。平成22年度は、苔状線維シナプス長期増強(LTP)誘発の際、苔状線維終末間での協力作用を仲介する拡散因子の同定を試みた。すなわち、複数の苔状線維が同時に活動した際、シナプス前終末間で相互作用を及ぼしあうシグナル伝達の解明に努めた。実験標本としては、ローラーチューブ注に基づく培養海馬切片を用いた(Gahwiler et al., 1998)。本培養脳切片標本では海馬歯状回やCA3野の構造がよく保たれており、神経細胞の単層化により容易に異なるタイプの細胞を確認することができた。細胞外刺激による苔状線維シナプス可塑性の誘発は、歯状回に刺激電極を設置した後、CA3野錐体細胞からバッチクランプ全細胞記録を行い、そしてLTP誘発のためのプロトコール(100Hz 1秒間を10秒毎に3回)で複数の顆粒細胞に刺激を与えた後、CA3野錐体細胞から記録されるシナプス応答の増大をモニタした。候補として考えられたGABA-GABAA受容体、GABAB受容体;グルタミン酸-代謝性グルタミン酸受容体、カイニン酸受容体の苔状線維シナプスLTPへの関与の可能性を検討した。GABAA受容体阻害剤、GABAB受容体阻害剤の存在下でもLTPは誘発されたが、代謝性グルタミン酸受容体阻害剤存在下ではその誘発が抑制を受けることを示唆するデータが得られた。今後さらに検討を続け、代謝性グルタミン酸受容体のどのサブタイプが苔状線維シナプスLTPにかかわるのか、また、カイニン酸受容体はその誘発に関与するのか否か検討し、新規の神経回路メカニズムと考えられるシナプス前終末相互作用のメカニズムを解明し、脳の情報処理に関する理解に貢献したいと考えている。
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Research Products
(2 results)