2010 Fiscal Year Annual Research Report
マカクザル盲視モデルを用いた視覚的気づきとその神経機構の解明
Project/Area Number |
21500377
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
吉田 正俊 生理学研究所, 発達生理学研究系, 助教 (30370133)
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Keywords | 膝状体外経路 / 空間的注意 / 視覚意識 / 急速眼球運動 / 盲視 / 残存視力 |
Research Abstract |
マカクザルの第一次視覚野を除去して作成した盲視動物モデルを用いて視覚的気づきの神経機構を明らかにすることを目的とした。視覚的気づきはサッカードを用いた検出報告課題を用いて評価した。この課題では損傷視野に標的刺激が現れる条件では標的にサッカードすれば報酬が与えられ、標的刺激が現れない条件(ST-)では注視点が消えてからも注視を維持することによって報酬が与えられる。損傷側の半球の上丘中間層より課題遂行中のニューロン活動を記録した。上丘ニューロン活動は、標的刺激が提示される条件(ST+)のうち、正しく標的の提示を報告できた試行(Hit)と報告できなかった試行(Miss)とでは、標的提示時の視覚応答がHit試行でより大きくなっていた。また、このような活動は標的刺激が現れない条件(ST-)で誤ってサッカードした試行(False alarm)では見られなかったので、運動準備などでは説明できない。また、このような活動は健常側の上丘では見られなかった。よって、このような神経活動の修飾はV1切除によって特異的に引き起こされた視覚的気づきに対応した神経活動であると結論づけることができる。さらに上丘浅層からも同課題遂行中の活動を記録した。これらの神経活動を視覚性ニューロンと視覚運動性ニューロンの二つのグループに分類して解析したところ、視覚性ニューロンでも視覚的気づきに関連した神経活動があることを見いだした。さらにこれらのニューロンの応答の時間特性について解析したところ、視覚情報が上丘浅層から上丘中間層に伝わっていく過程でhit-missの差が生まれていることを示唆するデータを得た。このことは、視覚的気づきに対応した神経活動が上丘内の局所回路によって形成される可能性を示唆している。
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