Research Abstract |
17系統のマウス近交系、A,AKR,BALB,C3H,B6,CAST;CBA,CFI,DBA,DDD,DH,KK,RF,RR,SJL,SS,SWRに由来する17種類のYコンソミック系統を利用し、80日齢時体重・精巣重量を解析した。また、♀C57BL/6J-A^yマウスとの交配によりF1を作出した。F1の半分は肥満マウスである。体重(肥満)・体長・血中脂質・血糖値・臓器重量などの形質について、約400個体以上のデータを収集した。精巣重量はYコンソミック系統間で広く分布し、Y染色体置換の結果、6系統のYコンソミック系統(Y^<C3H>,Y^<CBA,Y^<DBA>,Y^<KK>,Y^<RR>,Y^<SJL>)の精巣重量が遺伝背景のY^<DH>と有意に異なったことから、精巣重量にはY染色体遺伝子が関与することが明らかとなった。主として、コード領域に存在する非同義置換SNPをタイプし、精巣重量と有意に関連する遺伝子多型を検索した結果、3つのSNPが同定された(rs46947134,rs51766109,rs48685451)。これらSNPは各々Uty,Ust9y,Kdm5d(Y^<Mus> vs. Y^<Dom>)遺伝子に存在する。これら遺伝子は、HY抗原の異なったエピトープをコードする遺伝子と知られており、HY抗原が、精巣重量決定遺伝子であることを示唆するものである。 F1マウスの解析については、いくつかの形質でY染色体の関与が示された。特に、体重・肥満に関して、ある系統由来のY染色体を持つコンソミックマウスが最軽量・最低肥満を示す結果を得た(未発表)。上述の80日齢における解析においても、この系統のY染色体を持つコンソミック系統は最軽量を示した。異なった遺伝背景下でも再現されたことから、本Y染色体には肥満抵抗性を促進する遺伝子が存在することが強く示唆された。肥満を促進する遺伝子に比べ、それを抑制する遺伝子はあまり知られていない。ヒトにおいて、肥満防止は現代社会の主たる健康問題である。肥満問題の解決に寄与する遺伝子が同定される可能性が示唆された。
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