Research Abstract |
モルモットの卵巣凍結保存による系統保存法を確立するため,シリアンハムスターで成功したガラス化保存法が使用可能かを検討した。毛色検定が可能なように被毛が荼色(Weiser-Maples系)と白色(Hartley系)のモルモットを使用した。凍結用卵巣をWeiser-Maples系3週齢雌より採取し,卵巣を長軸の半分の位置で2分割とし,DAP213液によるガラス化法で液体窒素内にて凍結保存した。二週間後,8週齢のHartley系雌を借腹雌として卵巣移植を行った。マウス・ハムスター・スナネズミなどの卵巣嚢(卵巣を完全の覆う袋)とは異なり,モルモットはヒトと同様に卵管がラッパ状になって卵巣を覆う形状をしているため卵管采の切開は不要だが,移植卵巣を固定するためには卵巣同士を結紮する必要がある。そこで,借腹雌の卵巣を高周波電気メスで止血しつつ半分切除し,その切断面に移植卵巣を密着させ,さらに糸で結紮するという手法を採った。麻酔法はガス麻酔とした。凍結保存卵巣を融解後,8匹の借腹雌の左右の卵巣へそれぞれ凍結保存卵巣(2分割卵巣を1つずつ)の移植を実施した。術後回復ののち,Hartley系雄(13週齢)と交配し,毛色検定を試みた。借腹雌8匹のうち,4匹が2産,4匹が1産し,合計で31匹の産仔が得られたが,毛色は全て白色で,移植卵巣由来で生まれるはずの薄荼の毛色を持つ産仔は得られなかった。剖検したところ,移植卵巣は借腹雌の卵巣に接着しており,萎縮等は見られなかったことから拒絶反応はなかったようだが,卵胞構造がなかったことから血管浸潤が不十分であると考えられた。卵管采への癒着もあり,これらのことからモルモット卵巣移植を成功させるには卵巣をうまく借腹雌の卵巣との密着面をさらに広くして血管浸潤を促進し,かつ,卵管采の癒着を防ぐ策を講じるべきと思われた。なお,免疫抑制を考慮したスナネズミの卵巣移植も予定したが実施できなかった。
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