Research Abstract |
【目的】病理組織の画像解析において,これまでほとんど利用されることの無かった暗視野画像を利用することで,従来の明視野画像だけではできなかった新しい解析手法を実現すると共に,診断に有用な特徴量の算出法を実現する. 【研究成果】H21年度は,照明方向を変化させながら暗視野画像を撮像するシステムを構築し,肝病理組織標本の暗視野画像,明視野画像,および位相差画像を撮像した.撮像した画像を元に,病理組織の構成要素(核や細胞膜など)の抽出の可能性について検討した結果,主として「HE染色標本からの細胞膜の抽出」,「鍍銀HE染色標本からの線維と核の抽出」が有望であることが分かり,その抽出法の実現に取り組んだ. HE染色標本からの細胞膜の抽出に関しては,暗視野,明視野,位相差の3種類の画像の同じ位置の色情報を入力とする識別器により細胞膜を抽出した.色情報の様々な組み合わせで抽出正解率を評価した結果,細胞膜と非細胞膜領域の平均正解率は,従来の明視野だけを用いた場合の80.9%に対して,暗視野と位相差を組み合わせることで87.7%に改善できた. 鍍銀HE染色標本は肝病理組織に対して一般的に用いられる鍍銀染色とHE染色を同時に施したもので,N/C比の算出を主目的として作成した.この鍍銀HE染色標本からの線維と核の抽出に関しても,暗視野画像を利用することで,線維と非線維領域の平均正解率89.8%,核の抽出正解率83.4%を実現した. 即ち,暗視野画像を利用することで,従来困難であった機能の実現や精度の改善が実現され,暗視野画像の有用性を明らかにできた.この他,診断の難しい早期肝癌の診断に有用な新たな特徴量として核の集中度を考案し,その有用性を定量的に明らかにした.
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