2011 Fiscal Year Annual Research Report
高齢者のバランス運動学習における脳内シナプス修飾に関する実験動物学的研究
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21500471
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Research Institution | Teikyo University of Science & Technology |
Principal Investigator |
前島 洋 帝京科学大学, 医療科学部, 教授 (60314746)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
出家 正隆 広島大学, 大学院・保健学研究科, 教授 (30363063)
金村 尚彦 埼玉県立大学, 医療保健福祉学部, 講師 (20379895)
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Keywords | シナプス / ダルタミン酸受容体 / バランス / 運動 / 学習 |
Research Abstract |
老化促進モデルマウスを対象に(1)成体・対照群、(2)成体・運動群、(3)高齢・対照群、(4)高齢・運動群の4群に群分けし、小脳皮質、大脳皮質運動関連領野、海馬における神経受容体および神経栄養因子の発現に対する老化とバランス運動介入(focal balance exercise)の影響を検討した。focal balance exerciseとして、マウスの運動協調性の試験としても用いられるローターロッド運動(25rpm、15分間)を週3回の頻度で4週間課した。介入終了後、採取した小脳皮質、大脳皮質運動関連領野、海馬における各種遺伝子発現レベルをリアルタイムPCR法により定量した。小脳皮質においては、神経栄養因子であるBDNF、NT-4、NT-3の発現レベルが老化により有意に低下していたが、運動による発現レベルへの有意な修飾は認められなかった。大脳皮質運動関連領野においては、老化および運動による有意な発現修飾は認められなかった。一方、海馬において、主要な神経受容体であるNMDA受容体のNR1サブユニットおよびNR2Bサブユニットの発現に関して、高齢・対照群における発現レベルは成体・対照群よりも有意に低下していたが、高齢マウスに関してのみ運動介入による有意な発現増強が認められ、高齢・運動群は成体・運動群と同等の発現レベルであった。神経栄養因子BDNFの受容体であるTrkBに対する老化および運動による発現修飾もNMDA受容体における修飾と相同していた。以上の所見より、海馬の主要な神経受容体であるNMDA受容体は老化により発現レベルが有意に低下していたが、低負荷なバランス運動により、成体レベルまで発現が増強されることが確認された。広く高齢者の地域運動介入に取り入れられている有酸素効果を意図しない低負荷なバランス運動が、高齢者の運動機能のみならず、中枢神経系の中でも特に海馬におけるシナプス退行の抑制に対しても有効に作用することが期待された。
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