Research Abstract |
神経栄養因子は,神経細胞の生存、分化、生存維持に重要な役割を果たしている。ラット老齢・成体期の腰髄を対象に走行運動により,神経栄養因子とその受容体mRNA発現が賦活化されるか検討した。Wistar系雄性ラット老齢群2年齢,成体群10週齢を対象とした.走行期間は4週間とした,小動物用トレッドミルを使用し,走行速度17m/min,傾斜0°,走行時間1時間の条件で運動を課した.実験終了後,脊髄を摘出し,total RNAを抽出した.逆転写反応により作成したcDNAを鋳型とし,最後に神経栄養因子mRNAプライマーを用い,リアルタイムPCR法にてNGFとその受容体TrkA,BDNFとその受容体TrkB,GDNFとその受容体Gfrα1とGfrα2mRNA発現量を検討した.NGFとその受容体でTrkA mRNAの発現量には,走行運動や週齢による影響がなかった.BDNFmRNAは,成体走行群が有意に増加したが,TrkBについて老齢走行群の発現量が増加した.GDNFmRNA発現量は,成体走行群が非成体走行群に比べて有意の増加した,GFRα1mRNAは,老齢走行群と比べて,成体走行群,非走行群より有意に増加した.またGFRα2mRNAは,成体走行群が有意の増加した.老化により末梢臓器の神経栄養因子mRNAを産出する能力の低下や、逆行性輸送能力の低下などにより神経栄養因子発現量が低下したと考えられる一方,発現量が増加する神経栄養因子もあったことから,運動により活性化される因子が、週齢によって変化する可能性が示唆された。
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