Research Abstract |
筋ジストロフィーや筋萎縮性側索硬化症などによって四肢が麻痺している上に,発語も困難な重度障害者にとっては,福祉機器の操作,介護者との意思伝達にまで不自由さを伴う.障害者用の支援機器は数多く開発されているが,上記の重度障害者が容易に操作できる機器は殆どない.そこで,重度障害者においても随意動作が可能な「舌の動作」によってPC用のマウスを操作し,PC上で文字入力などを行う,重度障害者用のコミュニケーション支援機器として「舌マウス」の開発を目指している.本助成の最終年度である2011年度の実施内容と成果を下記に示す. 「舌マウス」システムの有効性を検討するために,規定した同一文章を異なる手法で入力し,それぞれの所要時間を計測した.入力手法は通常のマウス,口腔内リモコンを手で操作した場合,口腔内リモコンを舌で操作した場合の3条件とした.また,各条件共に"クリック機能を利用した場合"と"入力文字自動確定機能"を用いた場合の2条件としたが,当該リモコンを用いてのクリックができない被験者が数名いたため,"自動確定時間"を2.0と3.0秒の2条件を設定し,これらの条件下における規定文章の入力所要時間を計測・比較した. 一般のマウス利用時において,自動入力確定時間が2.0および3.0秒の場合は,40.7±1.5および57.2±5.3秒であった.続いて,口腔内リモコンを指で操作した場合と舌で操作した場合の結果としては,確定時間が2.0秒の場合は70.0±5.2および81.7±15.4秒,確定時間が3.0秒の場合は80.3±2.8および85.3±5.7秒となった.このことから,口腔内リモコンを指と舌で操作した場合では,約10%程度の差異に留まった.また,通常のマウスと比較した場合においても,"クリック"機能が無い場合の所要時間と比べると約50%増に留まっており,実利用可能な範囲にあると推察された.
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