2011 Fiscal Year Annual Research Report
酸化修飾代謝物質制御による維持透析患者の運動機能障害に対する改善
Project/Area Number |
21500532
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
大橋 篤 藤田保健衛生大学, 医療科学部, 准教授 (30310585)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中井 滋 藤田保健衛生大学, 医療科学部, 教授 (20345896)
村上 和隆 藤田保健衛生大学, 医学部, 講師 (30267950)
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Keywords | 抗酸化物質 / ラジカル捕捉活性 / 酸化ストレス / 血液透析 / 運動障害 / QOL評価 |
Research Abstract |
【目的】血液透析(HD)に起因する酸化ストレス(OS)は、長期HD患者の運動機能障害などの合併症に関与している。そこで、OSを抑制すべく開発されたポリスルホン(PS)HD膜にビタミンEを被服した透析器(VPS)を通常のPS膜透析器(APS)とクロスオーバで変更し、血清の酸化ストレス度と抗酸化力およびアンケート調査によるQOL評価を行った。【方法】外来通院をする維持透析患者19名を対象とし、酸化ストレスマーカはd-ROMとアルブミン(Alb)のカルボニル修飾度、抗酸化力は還元型アルブミン率(fHMA%)とDPPHラジカル捕捉活性(DPPH-RSA)で評価した。QOL評価はSF-36とKD-QOLを用いた。【結果】DPPH-RSA/AlbはAPS、VPSとも11(molTEq/gAlb)程度で差がなく、fHMA%も39%と41%で有意差は認なかった。次に、OS度評価についてはd-ROMsテストはAPS膜307±46(CARR)に比しVPS膜は291±46で低下する傾向が認められ、カルボニル化AlbはAPS膜4.6±1.6(nmol/g)に比し、VPS膜は3.8±0.5で有意(p<0.05)に低下した。アンケート調査でAPS膜とVPS膜のQOLを比較したところ、身体機能、体の日常役割機能、体の痛み、活力、社会生活機能については有意差が認められなかったが、全身的健康観はAPS膜47.2±20.6%からVPS膜53.6±20.9へ有意(p<0.05)に上昇した。【考察・結論】PS膜は現在、わが国で最も占有率が高く、良好な適合性材料として認識されている。今回、ビタミンE被覆膜と未処理のPS膜の抗酸化マーカを比較したが、両膜間に差は無かった。これは対照のPS膜自体の生体適合性がVPS膜と僅差であり、抗酸化マーカの測定感度が低いことが一因と考えられる。しかしながら、VPS膜はAlbのカルボニル化修飾度を抑制し且つQOL評価で全身的健康観を向上させたことより、OSの軽減は維持透析患者のQOL改善に寄与する可能性がある。【結論】ビタミンE被覆HD膜は血漿蛋白質の酸化修飾を抑制し、全身的健康感の向上を計れる可能性が示唆された。
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