2011 Fiscal Year Annual Research Report
認知症者を対象とした近時の成功経験の想起を促す電子日記帳の開発
Project/Area Number |
21500536
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Research Institution | 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所) |
Principal Investigator |
石渡 利奈 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所・福祉機器開発部, 研究員 (10415359)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
二瓶 美里 東京大学, 工学系研究科, 助教 (20409668)
本村 陽一 産業技術総合研究所, サービス工学研究センター, 副研究センター長 (30358171)
武澤 友広 福井大学, 生命科学研究教育センター, 助教 (90455379)
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Keywords | 痴呆 / 電子デバイス・機器 / 人工知能 / ユーザーインターフェース |
Research Abstract |
今年度の目標は電子日記帳を利用することで活動意欲の向上を促すことができるかどうかを明らかにすることであった。健常高齢者11名を対象に電子日記帳の利用前後において心理測定を実施した。実験に際して使用した電子日記帳は前年度に開発した試作版の仕様を変更したものであった。具体的には、日記の入力を一問一答形式で進めるテンプレート方式を新しく採用した。変更の理由は、自由記述のように自由度が高い状態で作成された日記では含まれる情報が豊富すぎて、成功経験に関する日記を抽出するためのベイジアンネットワークの学習にノイズが混入しやすくなり、阻害されるためである。抑うつ尺度を用いて活動意欲を測定したところ、抑うつ傾向が高い者の方が低い者よりも電子日記帳の使用による抑うつ傾向の減少の程度は大きい傾向がうかがえた。また、日単位で電子日記帳の使用前後の心理測定を実施したところ、使用によりポジティブ気分が向上することが統計的に支持された。以上の結果から、電子日記帳の利用により高齢者のポジティブ気分を向上させることで活動意欲を含む精神的健康にポジティブな影響を与えうることが示唆された。 研究期間全体を通じて得られた研究の成果は、次の3点に集約できる。(1)近時の成功経験を記した日記を呈示し、その想起を促すことで軽度の認知症者や高齢者の精神的健康の向上にポジティブな影響を与えうることを実証した。(2)国際機能分類のコードを利用することで従来のテキストマイニング手法よりも自己評価の向上につながる成功経験の抽出率が高いアルゴリズムを開発した。(3)認知症前段階の者が電子デバイスを利用する上で有効な操作補助を明らかにするとともに、画面の単純化という支援が記憶の想起にも有用であることを明らかにした。以上の成果は,既存の福祉機器では直接の支援の対象とされることがなかった精神生活に支援の可能性を広げた点で意義がある。
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Research Products
(3 results)