2009 Fiscal Year Annual Research Report
カフ圧による上肢または下肢虚血時の身体図式の知覚変化
Project/Area Number |
21500544
|
Research Institution | Naruto University of Education |
Principal Investigator |
乾 信之 Naruto University of Education, 大学院・学校教育研究科, 教授 (30144009)
|
Keywords | 身体図式 / 関節角度 / 末梢神経 / 触覚 / 運動制御 |
Research Abstract |
【目的】幻肢は一般的に習慣的な位置と姿勢を採用し,四肢切断前の姿勢に類似した姿勢をとる場合が多いが,幻肢の姿勢の知覚研究は十分に定量化されていない。したがって,カフ圧による上肢の虚血時の手指と手首の関節角度の知覚変化を定量的に測定し,どの末梢神経がその変化に関与しているかを検討した。【方法】被験者は10名の健康な成人男女(24-54歳)である。実験1では実験開始前10分間と実験中の手指と手首が屈曲位または伸展位に固定され,屈曲位と伸展位の実験は別々の日に行った。実験中,被験者の右上腕部にカフ圧(300mmHg)を加え,肘の触覚と痛覚がなくなるまで圧を加えた(約40分間)。次に,被験者は開眼し,右の手と前腕を紙箱で隠されたまま,関節が動く手の木製モデルを用い,指と手首の関節角度の知覚変化を再生した。その後,手のモデルの写真撮影を行い,示指と手首の関節角度を計測した。実験2では実験開始前10分間は手指と手首を屈曲位に固定したが,実験開始直前に伸展位に変換して実験を行った。【結果と考察】実験1では,カフ圧15分後から25分後まで手指と手首の関節の知覚が急激に変化し,伸展位で開始した時の関節の知覚は屈曲位の方向へ変化し,屈曲位で開始した時のそれは伸展位の方向へ変化した。実験2では,指と手首の関節の知覚は伸展位から屈曲位へと変化し,関節角度の知覚はカフ圧直前の姿勢に依存して変化することが判明した。そして,その変化は皮膚と固有感覚の受容器に関係する大径有髄線維の麻痺に対応していた。これらの結果は幻肢の形成に新たな知見をもたらした。第一に,幻肢の最終的な姿勢は感覚刺激が遮断される直前の姿勢に依存し,脳は感覚入力に依存した身体図式を保持していた。第二に,すべての被験者は解剖学的に正常な姿勢の幻肢を知覚した。第三に,虚血によって手の感覚が消失した時,手の姿勢の知覚は現実の姿勢から幻肢の姿勢へ連続的に変化した。
|
Research Products
(3 results)