Research Abstract |
目的:手首,肘,足首,膝を十分に伸展または屈曲して固定すると,皮膚と固有感覚の受容器に関係する大径有髄線維の麻痺に対応して,各関節は逆方向に動くように知覚されることを確かめた。さらに,手首を中間位に固定すると,どのようにその知覚変化が生じるかを検討した。 方法:実験開始前10分間と実験中に各関節が屈曲位または伸展位に固定され,実験中,被験者の右上腕部または大腿部にカフ圧(250mmHg)を加え,肘または膝の触覚と痛覚がなくなるまで圧を加えた(約40分間)。この時点で被験者の右の前腕または下腿の運動は消失している。被験者が閉眼の状態で,触覚検査と痛覚検査が行われた。ゴニオメータを付けた左の腕と足で右の各関節の知覚変化を示した。次に実験開始前と実験中の肘は十分な伸展位に固定されたが,手首は中間位に固定された。 結果と考察:大径有髄線維の麻痺に対応して,各関節の知覚が徐々に変化し,伸展位に固定した関節の知覚は屈曲位の方向へ変化し,屈曲位に固定したそれは伸展位の方向へ変化した。肘と膝の皮膚感覚は完全に消失していなかったので,体性感覚入力が部分的にしか遮断されない時でも,肘と膝の知覚が系統的に変化した。次に実験開始前と実験中の手首が中間位に固定された時,手首の知覚は変化しなかった。手首が中間位に固定された時,屈筋と伸筋からの求心入力は平衡状態にあり,入力が減少してもその平衡を保持している。対照的に,極端な姿勢の時,一方の入力が高く,他方の入力が低いので,求心入力の減少に伴って,高い入力の方が主として変化する。結果として,極端姿勢をとった場合,高い入力の減少によって反対方向に姿勢が知覚された。従来,四肢のないヒトに生じる幻肢は小径無髄神経からの入力の消失により,大脳の感覚運動皮質の再組織化が起こると考えられている。しかし,本研究は大径有髄線維からの入力の消失により,短期的な皮質の再組織化が起こり,関節の知覚変化を生じたと考えられる。
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