2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21500567
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
近藤 卓 東海大学, 文学部, 教授 (60266450)
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Keywords | 子ども / 死の認識 / 発達 |
Research Abstract |
これまで、平成21年度より23年度までの3年度計画で、「子どもの死の認識の発達に関する調査」研究をおこなってきた。平成21年度は、死の概念の三要素(不動性、不可避性、不可逆性)の理解の実態を、面接調査法によって明らかにした。ただ、先行研究を検討した結果、小学生の死の理解が三要素のみでは解釈しきれないことが示唆されており、そのことから成人の死の理解がさらに複雑なものであることが推察された。そこで、平成22年度は大学生を対象として先行的に面接調査を試み、おとなの死の概念の全体像を探索的にあきらかにすることを目指した。同時に、すでに実施した小学生対象の死のイメージ調査を再分析・考察し、次年度以降の調査の方向性を探った。また、次年度以降の調査の対象地域を現地調査し、教員らとの情報交換をおこなうとともに、子どもの生活を支える文化的歴史的な背景の特徴を調査した。 結果的に、大学生対象の面接調査では、死の概念は不動性、不可避性、不可逆性以外に、それらに統合しきれない「生まれ変わり」「死後の世界」「見守っている」などの思いがあり、従来の三要素では解釈しつくせないことがわかった。小学生対象調査の再分析の結果も合わせて考察したことで、死の三要素以外に、生まれかわり思想、新生願望、宗教的観念などが、死の意識に混在していることが明らかとなった。これらは、従来言われていた哲学性・文学性と一部が重なるものであるが、筆者はそれらを含めて物語性という新たな概念で統合することとした。 最終年度では、以上の調査研究の成果を踏まえて「死の認識の調査尺度」を作成し、死の認識が発達を遂げ一定程度安定していると考えられる中学生を対象として、アンケート形式の調査を実施した。調査対象は、東京都内と中国地方の二つの中学校の生徒914名であった。その結果、死の認識の調査尺度は、死の不動性、不可避性、不可逆性、物語性の四つの因子で構成されることがわかった。これらの結果をまとめた「報告書」を作成し、教育関係者・研究者に広く配布し研究の成果を社会に還元していくつもりである。
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Research Products
(7 results)