2009 Fiscal Year Annual Research Report
「一人称の科学」の基盤作り:理論と実践の循環と体験の言語化を促す質的研究法の開発
Project/Area Number |
21500573
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
村川 治彦 Kansai University, 文学部, 准教授 (20527105)
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Keywords | 質的研究法 / 認知意味論 / 身体性 / 言語と体験 / 国際研究者交流 / アメリカ |
Research Abstract |
この研究は、西洋近代科学の基本的な枠組みである主客二元論、心身二元論を乗り越える様々な試みの根本問題が身体経験と言語の関係にあるという前提のもとに、身体経験を意味のある形で言語化し理論と実践を結びつけることを可能にする質的研究法の開発を目指すものである。この研究目的のもと、平成21年度は理論的基盤の整備として、ジェンドリン哲学とマーク・ジョンソンが提示する認知意味論の整理、ジェンドリンが開発したフォーカシングの質的インタビューへの応用法の開発の試み、心身医療の臨床現場における身体経験と言語の関係についての調査を行った。 具体的には(1)関西大学の池見陽教授(臨床心理学)、三村尚彦教授(哲学)が主宰するジェンドリン著「Process Model」の研究会(年間14回の読書会と1回の合宿)に参加、ジェンドリン哲学の基本的枠組みを整理した。この研究成果として研究代表者が2009年12月13日の第19回人体科学会において「意味の基盤としての身体性について:ユージン・ジェンドリンのプロセスモデルと認知意味論からの提言」として口頭発表を行い他の研究者から多くの好意的フィードバックを頂いた。(2)2009年12月5日6日に行われた「第3回21世紀統合医療フォーラムー心身医学と一人称のからだの出会い」においてシンポジウム、講演会に参加。特に心身医学者山岡昌之氏、心理臨床家藤見幸雄氏、日本心療内科学会会長中井吉英氏によるシンポジウム「一人称のからだと関係性:摂食障害の治療の現場から」と、藤見千雅子氏による植物の精油の香りの体験が引き起こす身体経験の深まりと、その体験を意識化して共有する具体的な方法を提供する「アロマテラピーとドリーミング」の実践的講演を主催した。(3)2010年1月と3月に三宅麻希関西大学非常勤講師を迎えてフォーカシングを応用した質的インタビュー法の開発を目的とした「体験過程スケールを応用した質的研究法の試み」研究会を行った。 今年度は、こうした活動によって本研究の理論的基盤作りに一定の見通しをつけることができた。また、本研究が質的研究法開発としてだけでなく、広く心理臨床、看護、医療の現場においても重要な意義をもつことも明らかになった。次年度は、国際シンポジウムの開催に向けて、米国の研究者との打合せを行うとともに、具体的なインタビューにも取りかかっていく。
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