2010 Fiscal Year Annual Research Report
「一人称の科学」の基盤作り:理論と実践の循環と体験の言語化を促す質的研究法の開発
Project/Area Number |
21500573
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
村川 治彦 関西大学, 人間健康学部, 准教授 (20527105)
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Keywords | 質的研究法 / 認知意味論 / 身体性 / 言語と体 / 国際研究者 / アメリカ |
Research Abstract |
この研究は、西洋近代科学の基本的な枠組みである主客二元論、心身二元論を乗り越える様々な試みの根本問題が身体経験と言語の関係にあるという前提のもとに、身体経験を意味のある形で言語化し理論と実践を結びつけることを可能にする質的研究法の開発を目指すものである。この研究目的のもと、本年度は、M.ジョンソン氏を招聘しての国際シンポジウムを開催する予定であったが、ジョンソン氏との連絡調整が年度後半になってしまい、年度内の開催は実行できなかった。しかし、昨年度からの質的研究法研究会を継続すると共に、公開講演会、研究フォーラム、国際研究者による講演会1回を開催し、研究者の交流を進めることができた。今年度の主な成果は以下の通りである。(1)2010年7月31日に大阪大学西村ユミ氏、関西大学池見陽氏を迎え「『交流する身体』から生み出されることば一からだの感じを手がかりにした実践」をテーマにした公開講演会を行った。この成果は、Mind-Body Science誌2011 No.21に「人体科学会第21回公開講演会報告」として報告した。(2)2010年12月4日5日に関西医科大学にて一人称の体験を探求する身体技法であるSomaticsの代表的な実践家と心身医学に携わる医療者を招いて、主観的な体験と医療の分野で行われる客観的な身体へのアプローチの違いがもたらす問題について検討した。特に、E.Gendlinの哲学に基づいて池見氏が提示した暗在と明在の相互作用という視点は、一人称のアプローチにおける体験と言葉の関係について考えるうえで、大きなヒントになった。(3)2010年5月と8月にフォーカシングを応用した質的インタビュー法の開発を目的とした「体験過程スケールを応用した質的研究法の試み」第3回、第4回研究会を三宅麻希氏を迎えて行った。(4)2010年10月19日に、ボストン大学名誉教授のDr. Livia Koan博士を迎え「坐忘と座禅」をテーマに講演を行ってもらい、東洋の伝統的瞑想法である坐忘と座禅の比較を通して、一人称体験の探求法についての示唆をもらった。その成果は、12月28日の第9回日本トランスパーソナル心理学/精神医学会学術大会にて発表した
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